Q164★硫化鉄は、硫黄と鉄が化合してできる物質ですが、硫黄の化学記号はS8、鉄はFeなのに、化合した硫化鉄の化学記号はFeSとなります。S8+Fe=FeS この式だとSの数が減っています。なぜですか。教えて下さい。


アルファベット1文字もしくは2文字を使って元素を表すのが元素記号です。これは,元素の周期表に載っているのでわかりますね。それぞれの元素に対応して元素の名前が決まっており,また元素記号が決められているのです。この元素記号はいろいろな使い方ができます。元素を示すのはその一つで,その他には,その元素の原子を示すこともできます。元素記号の前に数字が書いてあればその原子がいくつあるか(厳密に言うと何モルあるか)を示しています。一方で,元素記号の後ろに小さい数字を書くことがあります。この場合も原子の個数あるいはモルを示すことになりますが,その元素が化合物や分子を作るときに,どのくらいの数で化合物を作るのかを示す決まりになっています。
さて,ご質問ですが,以上のことをまずご理解下さい。硫黄という元素は私たちが生活しているような気温や気圧のもとでは,S8で示すような分子がたくさん集まって存在しています。そこで、これは分子式といいます。一方,鉄はどのような小さな鉄の粉の中にも,鉄の原子が数え切れないほど含まれています。FeSは、鉄と硫黄が1つづつ手をつないで分子として存在するのではなく、たくさんの鉄と硫黄が集まってその割合が1:1ということを示しているので、組成式といいます。
S8 + Fe → FeS というように書くと、化学式の左と右でそれぞれの元素の数が変わってしまって、ご質問のようにSの数が減ったことになり、奇妙です。そこで、分子式や組成式の前に数字を書いて、右と左の原子の数が揃うようにするのが正しい書き方になります。この場合は、S8 + 8Fe → 8FeS というように、FeとFeSの前に8を書いておくと、ちょうど反応の前と後で、硫黄も鉄も数が合うことになります。8FeSは、FeSが8つということです。この式の中では硫黄の原子8個が、鉄と反応することを示しています。中学校では分子のことを詳しく勉強しないので,元素どうしの反応あるいは原子と原子との反応と考えて下さい。



(MT & RN) 2005/11/17