Q20★なぜ硝酸の化学式がHNO3なのか?硝酸ができる過程を説明して下さい。


 化学式は、その物質を構成している元素とその構成比率がわかるようになっているものです。硝酸の化学式HNO3は、硝酸が水素(H)と窒素(N)と酸素(O)からできており、それらの構成比率(原子の数の比)が1:1:3であることを示しています。
 「硝酸」は古くから知られていて、その成分を分析してゆくと、水素、窒素、酸素からできていることが分かり、さらに詳しくその組成を調べた結果、原子数の比が1:1:3であることがわかったものです。もし、原子数の比だけであれば、その原子の数が、H2N2O6でもよいのですが、硝酸を構成している基本の粒子(分子といいます)はその数が1個、1個、3個であることがわかっている(こう考えることでいまのところすべてが説明つく)ので、H2N2O6ではなく、HNO3の化学式で示します。

 しかし、実際にあなた方が見たり、使ったりする硝酸は、ほとんどが硝酸の水溶液です。もしあなたの質問が、このことを考えた質問であるなら、HNO3という化学式は、場合によって硝酸分子を示したり、その水溶液を示すときがあることを知っておいてください。たとえばHClと化学式で示す塩酸も実は同じ化学式HClで示される塩化水素の水溶液のことです。HClの場合は呼び方が変わっているのでまだ判りやすいですが、硝酸の場合は紛らわしいですが呼び方は同じです。

 硝酸ができる過程について回答します(高校生のみなさんは、教科書で、オストワルト法のページも参照してください)。
 硝酸は窒素が酸化されたものです。しかし、窒素は私たちが呼吸している地球上の空気の80%を占めている安定な物質であり、酸化しにくいので、硝酸はアンモニアNH3(窒素が還元されたもの)を酸化してつくります。まず、アンモニアを酸化すると、いろいろな種類の窒素の酸化物(N2O, N3O2、NO、N2O3, NO2、N2O5など)が出来ますが、その中で、酸化反応の強さや、触媒を使うなどの工夫をして、NO2をたくさんつくります。3分子のNO2に水(H2O)を1分子を働かすと、2分子のHNO3とNOができます。このNOはまた酸化してNO2にします。このようにして硝酸を作ります。
     3NO2+H2O→2HNO3+NO
 窒素は酸化されにくいのですが、自動車のエンジンの中のように空気を使って高温で燃料を燃やすと、空気中の窒素も酸化されて、NOが発生し、排気ガスとして排出されます。このNOは空気中ではそこに存在する酸素やオゾンO3によって簡単にNO2に酸化されます。こうしてできた空気中のNO2に雨が降り注ぐ(NO2が雨雲に溶け込む)と、上記のように硝酸ができてしまいますね。これは、今地球上で問題となっている酸性雨の原因の一つといわれています。そのため、現在ではこのような窒素の酸化物を排気ガスの中から取り除く工夫がされ、排気ガス中の窒素酸化物は少なくなっています。この技術は日本が世界をリードしています。
 また、自然界(地中)にはアンモニアを酸化して亜硝酸HNO2(硝酸よりも酸素が一つ少ない酸)をつくる亜硝酸菌や亜硝酸を酸化して硝酸をつくる硝酸菌と呼ばれる菌がいて、これをうまく利用して硝石をつくることができます。 
 鉱物の硝石やチリ硝石は、HNO3のHがカリウムKやナトリウムNaに変わったKNO3やNaNO3の化学式で示される物質で火薬の原料です。硝石がほとんどとれない日本では上記の亜硝酸菌や硝酸菌を利用して硝石作りをしたようで、江戸時代には、幕府に見つからないように、各藩が作っていたようです。


(MA) 2003/07/04