Q201★授業で中和滴定をする際、酸の試薬にシュウ酸を用いました。シュウ酸はほうれん草の灰汁(あく)だそうです。野菜や果物に含まれている灰汁もみなシュウ酸のように酸性を示すのですか?
また野菜や果物のpHを調べると部位によって異なると聞きました。それは灰汁(あく)の強さや種類と関係あるのですか? (例えば果物の灰汁(あく)は種や皮の部分が強いというように。)例えば灰汁(あく)が酸性を示すのならば、その野菜や果物も酸性であると考えていいのですか? 灰汁にはカリウム、マグネシウム、カルシウムなどの無機物とシュウ酸、ポリフェノール、配糖体、サポニンなどの有機物があり、全てが酸というわけではありません。また、野菜や果物では部位によって違う機能を担うために成分も異なり、灰汁に該当する成分が含まれる場合もあります。 植物細胞の中に液胞(トノプラスト)と呼ばれる器官があり、その器官の機能の一つとして、器官の中に水素イオン(H+)を取り込んで浸透圧を生成し、植物組織をいわゆるシャキッとさせています。水素イオンを取り込むと電気的中性を保つために陰イオンを同時に取り込みますが、植物の種類により陰イオンとしてシュウ酸イオン(C2O42-)、硝酸イオン(NO3-)、塩化物イオン(Cl-)、クエン酸イオン(C6H8O7が電離して生成した陰イオン)などを取り込みます。果実は植物組織の中では最もサイズ(大きさ)の増加の激しい個所ですので液胞の浸透圧をどんどん上げて行かなければなりません。それで特に果実は酸性度が高くなっている(水素イオンの蓄積量が多い)と思われています。通常はpH 5.0程度です。本にのっている酸性度の特に高い植物を下に上げておきます。これらの植物も全ての組織が酸っぱいのではなく、細胞質のpHはほぼ中性か弱アルカリ性です。ただ、液胞の占める体積が80から90%ありますでの、噛んで細胞を壊すと混ざって全体としては液胞のpHになります。 果実:ライム(pH 1.7)、レモン、サクランボ(pH 2.5)、グレープフルーツ(pH 3.0)。葉:カタバミ(pH1.3)、ベゴニア(pH 0.9 – 1.5) その他、サボテンは炭酸ガスを夜間にリンゴ酸として液胞に保存し、日中にそのリンゴ酸から脱炭酸して生成させた炭酸ガスをもちいて光合成しています。サボテンの葉は朝はpH 1.4で噛むと酸っぱい味がしますが、光合成で使い切った午後にはpH 5.5になっています。 (MT, FT) 2006/08/08 - 2020/01/24 |