Q213★銀の性質について、本や教科書に<光感受性に優れていて、フィルムの感光剤に使われている>と書いてありました。しかし、それだけでは銀が光に当たるとどのような反応が起きて、どうなるのかわかりません。光が当たると別の物質に変化するのでしょうか? イオン? 電子が移動して崩れる?などいろいろな考えが起こりますがわかりません。銀が光にあたったときの詳しい変化を教えてください。また、銀以外でも光感受性に優れた物質はあるのですか? 写真のフィルムの感光剤として臭化銀(AgBr)などのハロゲン化銀が利用されています。AgBrに光が当るとまず電子が飛び出します。飛び出た電子が銀イオン(Ag+)に取り込まれると中性の銀原子(Ag)となります。すなわち、銀イオン(Ag+)が還元されて銀原子(Ag)になります。生成した銀原子が数個(個数をnとします)集まって銀原子のクラスター(Agn)が生成します。クラスターとはぶどうなどの房という意味で、原子や分子やイオンなどの粒子が集まった状態についての呼び方です。この銀原子のクラスターを潜像と呼び、還元試薬によるフイルムの現像の過程で、銀原子クラスターが触媒となって潜像の周りで銀イオンの還元が速く進行し、銀原子の数が増加して目に見えるような像が生成します。 フイルムの定着の過程で、光が当らなかった部分のAgBrを定着試薬で水に可溶性の錯体にして取り除けば、光が当った部分の銀の黒い像が現れます。 ハロゲン化銀以外にも光感受性のある物質は沢山あります。たとえば、光を吸収して蛍光などの発光を示す物質などがあります。また、光の作用で有害物質や汚染物質を分解したり、水を分解して水素と酸素を生成する触媒となる最近話題の酸化チタン(TiO2)、光によって化学反応して色が変化する性質(フォトクロミズム)を有する物質などがあります。自然界では水と炭酸ガスから光の作用で炭水化物を生成する光合成の触媒となるクロロフィルは自然界では最も重要な光感受性物質と言えます。 (FT) 2006/08/11 - 2020/01/24 |