Q244★私は塩を入れた水と、入れていない水を凍らせて、どちらが融けにくいかを調べました。 最初は、塩を入れた氷の方が融ける量が少なかったのですが、途中からたくさん融けるようになりました。また、塩を入れていない氷の方は、最初は多く融けていたのに、途中から融ける量が減りました。結果として、塩を入れた氷の方が早く融け終わりました。氷点降下でできた氷が融けるときのことについて教えてください。また、初めと終わりで融ける量が変わってきたのには意味があるのでしょうか。
面白い観察です。条件によると思いますが、私の観察でも塩を入れない氷が初めは早く融けますが、最終的には塩を入れた氷が早く融けました。固体が融ける速さは色々な条件によって決まるのでとても複雑です。固体が融ける温度を融点と言います。固体が融けるのは固体の融点より周囲の温度が高いとき固体は周囲から熱をもらって溶けます。固体が融ける速さは固体の融点や周囲の温度により決まり、融点と周囲の温度差が大きいほど固体は速く溶けます。 塩を入れない氷と塩を入れた氷の融ける速さを比べる場合、固体の融点と共に周囲の温度を考えることが大事です。水の凝固点は0℃で、氷の融点も0℃です。塩水(NaCl水溶液)の凝固点は凝固点降下によって水の凝固点より低く、塩の濃度が高いほど凝固点は下がります。塩水からできた氷は、氷(水(H2O)の固体)と塩の固体(塩化ナトリウム(NaCl))の混合物の固体となっています。氷と塩の混合物の固体の融点も凝固点と同じく氷の融点より低く0℃以下です。周囲の温度がこの融点より高くてしかも0℃以下であればいくら時間をかけても塩を入れない氷は融けないし、時間をかければ塩を入れた氷は融けます。すなわち、塩を入れた氷が早く融けます。しかし、質問の条件は空気中(たとえば25℃)に放置した場合です。 塩を入れない氷を空気中に置いた場合を考えます。氷の表面は空気に触れて熱をもらい0℃の氷となり、さらに熱をもらって融けて0℃の水になります。融けた水も空気から熱をもらい温度が上がります。氷の内部も表面からの熱伝導により温度が上がりほぼ0℃になっていると考えられます。氷が融けて表面に水ができると氷は水から熱をもらって融けるので溶けた水の温度は下がりますが、周囲の空気からの熱で温度が上がります。そのため、融けた水の温度は氷が融ける量と空気の温度によって決まります。その水の温度によって氷の融ける速さが決まると考えられます。 次に塩を入れた氷を空気中に放置した場合を考えます。この固体(氷と塩の混合物)は空気に触れて温度が上がり、融点(0℃以下)以上の温度で氷と塩が触れあった部分から融け始めて塩水となります。この時、融けていない固体から熱を奪うので固体の温度は下がります(氷に塩を混ぜると氷が融けて温度を下がり0℃以下になるのと同じ現象です)。すなわち、塩水の固体(氷と塩の混合物)の温度は、塩を入れない固体(氷)の温度(0℃)より低くなります。この温度の違いが初めの融ける速さの違いの原因ではないでしょうか。塩水の固体の温度が0℃以下であれば(氷と塩の混合物)の中の氷は融けにくいはずです。時間が経って融ける量が増えていき、融けた塩水の量も増え、周囲の空気により塩水の温度も上がっていくと、氷が塩水に融ける温度は元々0℃より低い(凝固点降下による温度)ので、塩を入れない氷より速く融けるようになり、最終的には塩を入れた氷が早く融け終わったと考えられます。 塩水の塩の濃度を変えたり、周囲の空気の温度を変えたり、空気の代わりに水の中へ入れたり、その水の温度を変えたりしてみたらどうでしょう。固体の温度や、周囲を水にした場合の水の温度の時間変化を測定してもおもしろいと思います。塩水以外でも試してみたらどうでしょう。" (FT) 2006/08/29 - 2020/01/24 |