Q275★酸素系漂白剤と大根を使い、酸素を作る実験をしました。実験は成功したのですが、酸素系漂白剤の何の成分と大根の何の成分が化学反応して酸素ができたのか教えてください。 酸素系漂白剤の大部分は過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)という成分です。 この「過」と言うのは化学でも「さらに多く」と言う意味があります。炭酸(分子式:H2CO3)というのは二酸化炭素を水に溶かした時に水と結合して出来る化合物ですが、その前に過がつくと、「さらの多くの酸素がついている」ことをあらわしています。そこで過炭酸というと、分子式はH2CO4ということになります。炭酸も過炭酸も単独では取り出すことが出来ませんが、炭酸とアルカリの水酸化ナトリウムが中和して出来た化合物(これを塩といいます。)である炭酸ナトリウムは,取り出すことが出来ます。同じように、過炭酸ナトリウムも過炭酸と水酸化ナトリウムの塩で取り出すことが出来ますが、酸素が一つ余分に結合している分、不安定になり、これを水に溶かすと炭酸ナトリウムと過酸化水素になってしまいます。 Na2CO4 +H2O → Na2CO3 + H2O2 過酸化水素の溶けた水はオキシドールとよばれ消毒薬として古くから使われてきました。過酸化水素も、水にさらに酸素が化合した構造をしていて、不安定で水と酸素に分かれますので、傷口に塗ると酸素が泡となって傷口を消毒すると云われていました。普通はゆっくりと酸素を発生して,漂白や酸化剤,時には消毒剤として働きます。高温やアルカリ性では分解の速度が速くなります。すなわち、上の作用が強くなると云うことです 中学校では,この過酸化水素を分解して酸素を発生させる実験をしますが、そのままではなかなか酸素が発生しないところに、二酸化マンガンという粉末試薬を少し加えるとすぐに酸素が発生します。このように反応の前後でそれ自身は直接反応に関係ないけれども、過酸化水素が水と酸素に分解する反応が速くなったように、反応速度を速くする物質を触媒といいます。 2H2O2 → 2H20 + O2 いま,大根おろしを用いたとのことですが,その大根おろしの中に,過酸化水素の分解を早くする触媒である過酸化水素分解酵素(カタラーゼ)が含まれていて、二酸化マンガンと同じ働きをしているのです。傷口にオキシドールをつけた時に酸素の泡が出るのも,人の体(組織の中)にカタラーゼがあるからです。過酸化水素は生体にとっと有毒ですので、出来るだけ早く分解する必要があり、多くの生物は過酸化水素を分解するカタラーゼを持っています。 過炭酸ナトリウムを水に溶かした時に出来る炭酸ナトリウムはアルカリ性を示しますので、手に触れると少しぬるぬるします。 (MA & SI) 2007/08/09 |