Q280★なぜボールは弾むのですか? 弾まないボールと弾むボールの違いはなにですか? どうしたらボールは弾むのですか? ボールが弾むか弾まないかの違いを直接説明する原理は化学とはすこし分野が違うのですが、このことについて、材料の観点から説明することにします。 ボールが何かにあたって弾む(「反発する」といいます)のは、ものにボールが当たると変形し、それが元に戻ろうとする力(弾力)を材料が持つ(これを弾性といいます)ためです。ものの形が復元するとき、ボールの進む方向が逆の方向にエネルギーが加わるため、ボールは跳ね返ります。 さて、その元に戻ろうとする力はどこからくるのでしょうか。物質は、どんどん細かくみていくと最後には原子がならんでいる状態になります。この原子はお互いにいろいろな力で引きつけ合って、最も安定な状態(原子と原子の間の距離)に保ちながら並んでいます。この最も安定に並んでいる状態に力が加わると、ちょうど押しくらまんじゅうで人を押しつぶしたように原子同士が近づきます。ところがこの状態は安定ではありません。そのため、元にもどろうとして、弾力が働くわけです。ところが、物質によっては、押しつぶしてしまうと原子同士が近づくだけでなく、簡単に並び方を変えてしまうものがあります。たとえば純金はハンマーでたたくと簡単につぶれてしまい、最後にはごくわずかな厚みをもった金箔(きんぱく)にまでになります。金でボールを作るわけにはいきませんが、もしこういった性質を持ったものでボールを作ってもほとんど弾まないことになります。水を含んだ粘土も同じように簡単に変形する性質をもっています。こういった性質のことを「塑性(そせい)」と言います。 よく弾むボールは弾性が大きく、弾まないボールは弾性が小さい、あるいは塑性が主にはたらく物質から出来ていることが多いです。弾性の大きな物質の代表はゴムですが、ゴムだけからできているスーパーボールは大変よく弾むことがわかると思います。なお、普通スポーツで使うボールの多くは、ゴムの中に空気を入れて使用することが多いです。空気は気体ですから、圧力に対して極めて大きく変形します。そのため、周りのゴムの変形が中の空気を大きく圧縮して変形させるため、中の圧力が上がります。その圧力が元に戻ろうとして、ゴムを元の形に戻そうとして反発します。このため、ボールは大きく弾みます。ですから、空気の抜けたボールは、反発力があまり働かず、あまり弾まないことになるわけです。 なお、物質は「弾性」と「塑性」の両方を持っています。この2つの性質は変形させようとする速度によっても変わってきます。たとえば、水面に石を垂直におとすと、殆どの場合石は水の中に入って沈みます。ところが、水面すれすれの角度で石を横から投げると、うまくコントロールすれば、石は水面で弾かれていきます。これは、水面が持っているわずかな弾性を利用しているため、石を速く投げると水面で石が反発をうけるためにおこります。ふつう変形が速いほど、弾性は大きくなります (MM) 2007/08/20 |