Q296★石膏に水を加えると発熱する原理について教えてください。


 石膏の化学式はCaSO4・2H2Oであり、化合物中に結晶水と呼ばれる水分子を含んだ形で存在します。この石膏を80℃程度に加熱すると、その結晶水が一部離れてゆき、最終的に75%の水分子が失われ、焼石膏と呼ばれる、分子式CaSO4・1/2H2Oの化合物に変化します。石膏をもっと高温で加熱すると、完全に水分子が離れて、分子式CaSO4の硬石膏に変化します。
 「石膏が固まる」という現象は、実は上記の現象の逆のパターンなのです。

 さて質問に対する回答ですが、水を混ぜると発熱するのは、いわゆる水和という現象です。この場合、結晶水といった形で水和がおきていると考えられます。上記でも述べましたが、結晶水というのは、結晶中に一定の化合比で含まれて、普通、結晶の一定の位置に固定されており、結晶格子の安定化に必要な水のことをいいます。
 焼石膏は石膏に比べ、水分子を失っているので、構造が不安定となり、砕けて白い粉末になります。この焼石膏に水を加え石膏にする場合、その安定化エネルギーを熱として外部に放出します(ちなみに、硬石膏に水を加えても石膏に戻りますが、水和が遅く、彫刻や治療にはあまり有効ではありません)。

 この水和した石膏の結晶の安定化に、水がどのように働いているのか、水分子がどのような状態にあるのかについて、いくつか考えられます。H2O分子として塩類のイオンに配位している場合、配位しないで結晶格子の空所を満たすために一定の割合で存在している場合、あるいは、H2O分子よりもオキソニウムイオン(H30+)として含まれていると考えられる場合や、 OH基として含まれていて加熱するとH20として脱水されるもの(構造水)等です。石膏の結晶水は,おそらく一番目の状態と思われます。


(MA & TK) 2007/10/11 - 2020/01/24