Q301★金属はずっと水の中にあってもさびるのでしょうか?


 鉄の原料である鉄鉱石は、自然界においては主として鉄と酸素からなる安定した酸化物です。この鉄鉱石から酸素を分離して作られた鉄は、温度、湿度等の環境の影響を受けやすく安定した元の酸化物に戻ろうとします。この酸化物が錆と呼ばれるものです。しかし、鉄を自然の中に放置しておけば必ず錆びるというものではなく、錆びるには空気(酸素)と水の両方が存在することが必要です。実際、鉄片を「乾いた空気中(水すなわち水蒸気(湿気)が存在しない場合)」や「あらかじめよく沸騰させて水中の酸素を追い出した純水中」に浸しても、鉄片は光沢が保たれ錆びません。
 鉄の錆びる現象を化学式で表してみると、次のようになります。

(1) Fe + 1/2 O2 + H2O → Fe(OH)2 (鉄イオンと酸素と水が反応して水酸化鉄(Ⅱ)の白濁物を生成します)

(2) 2 Fe(OH)2 + H2O + 1/2 O2 →2 Fe(OH)3(さらに酸化されて水酸化鉄(Ⅲ)の赤褐色沈殿(赤錆)に変化します)

 鉄は水中で酸素と接すると、鉄から酸素に電子が渡り、鉄はFe22+イオンに、酸素は最終的に水分子へと4電子還元され、水酸化鉄(Ⅱ)Fe(OH)2が生成します。酸性水溶液中では、酸素ではなく、水素イオンが還元され水素ガスの発生をともない鉄が溶解します(2H+2e-→H2↑)。なお、中性、塩基性の水溶液では、白濁物である水酸化鉄(Ⅱ)Fe(OH)2は (2)式で示されるように、さらに酸化され、水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3の赤褐色の沈澱となります。


(TK) 2008/01/16 - 2020/01/24