Q304★ゼラチンと寒天の実験をしています。1)2つの物質の違い、2) こんにゃくゼリーとは何か、3) 酸っぱい物を入れて固まらないのはなぜか。 ★乳製品とゼラチンについて★4) ヨーグルトがゼリー状に固まるのはなぜか。 これらを調べるのは難しいといわれました。学校でするので薬品や機材には困りません。高校生にもできる、これらを調べる実験方法があれば教えて下さい。


まず1)、2)、3)の質問について、まとめてお答えします.

ゼラチン、寒天、コンニャク(ゼリー)の違いですが、以下のような点が異なります。

ゼラチン・・牛や豚の皮、骨に含まれるコラーゲンと呼ばれるタンパク質から作られます。

寒天・・天草、オゴノリなどの主に紅藻類から作られ、アガロース、アガロペクチンという多糖類(糖がたくさん連なったもの、食物繊維とも呼ばれます)を主成分としています。

コンニャク・・コンニャク芋から作られ、グルコマンナンという寒天とは別の種類の多糖類が主成分です。

ゼラチンの主成分のタンパク質も、寒天やコンニャクの主成分の多糖類も非常に固まりやすい性質を持っているのですが、いずれも酸を入れてあたためると分解して、ゼラチンはアミノ酸へ、寒天やコンニャクは「単糖」へ変化します。酸っぱいものを入れて煮ると固まらなくなるのはそのためです。


さて、まずこれら3つの違いを実験で確かめる方法ですが、タンパク質や多糖類を呈色反応で分析してやると区別することが出来ます。

ゼラチンを水に暖めて溶かし、水酸化ナトリウム水溶液、次いで硫酸銅水溶液を少量加えてやると紫色に変化するはずです(ビウレット反応と呼びます)。また、同様に1%ニンヒドリン水溶液を加えて加熱すると同様に紫色になります(ニンヒドリン反応といいます)。これらの結果より、タンパク質の存在を確認することができます。寒天は、純度の高いものであればタンパク質は含まれていませんので、これらの呈色反応では色は変化しません。

また、寒天を同じように加熱して溶かし、希硫酸を加えて加熱してやると分解して単糖になります。いったん炭酸ナトリウムなどで中和した後、フェーリング液を加えてやれば赤色沈殿が生じるはずです。また同様にアンモニア性の硝酸銀水溶液を加えてやると、銀鏡の生成が起こります。これらによって、単糖の存在が確認でき、寒天に多糖類が含まれていることが確認できます。逆に、これらの呈色反応は、糖を含まないゼラチンでは起こりません。

コンニャクゼリーの場合、グルコマンナンの他にも味付けのためにいろいろなものが含まれており、またコンニャクの場合も一度固めてしまったものは溶けないので、上記の方法できちんと確認するのは難しいですが、コンニャクの材料である「精粉」を手に入れることができればなんとか可能かもしれません。ぜひ試してみてください。

以上の方法で、ゼラチンと、寒天・コンニャクを区別することができます。


そして、酸っぱいものと混ぜた時に固まらなくなる原因である、タンパク質や多糖類の分解、つまりアミノ酸や単糖の生成の確認の方法ですが、少し実験の難度が高くなりますが、薄層クロマトグラフィーあるいはペーパークロマトグラフィーによっても行うことができます。概要のみ以下にお答えしますので、詳しくはクロマトグラフィーに関する実験書を参照してください。

まずゼラチンを溶かして、酸を入れて加熱して分解したあと、アルカリで中和し弱いアルカリ性にします。TLCプレートあるいはペーパークロマトグラフィー用の濾紙に、もとのゼラチン溶液、分解した溶液、ア
ミノ酸溶液(グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニンなど)を並べてスポットして、展開液に漬けて展開します。展開したプレートをニンヒドリン水溶液で発色させれば、ゼラチンが酸で分解してアミノ酸になっていること、またどのような種類のアミノ酸が含まれているかが確認できます。

寒天、コンニャクについても同じような方法で確認できます。寒天は、主にβ-D-ガラクトース、3,6-アンヒドロ-α-L-ガラクトース、コンニャクは主にグルコースとマンノースという、それぞれ違う種類の単糖から成っていますので、分解した後の溶液に含まれている単糖の種類を薄層クロマトグラフィーで確認することによって、寒天、コンニャクの区別をすることが出来ます。

なお、分解のしやすさはゼラチンと寒天で違います。酸の種類や温度によって固まり方にどんな違いが出るか試してみても面白いかもしれませんね。

展開液をどのようなものにするかなど、何回かやってみないとなかなかうまくいかないと思いますが、余裕がありましたらトライしてみてください。


次に、4)のヨーグルトが固まる理由ですが、
ヨーグルトは、牛乳を乳酸菌により発酵させて作ります。乳酸菌は牛乳に含まれる乳糖やブドウ糖を分解して乳酸に変えます。一方、牛乳にはカゼインと呼ばれるタンパク質が含まれていますが、これはpH=4.6周辺の弱い酸性の条件で固まり分離する性質があります。そのため、発酵が進んで乳酸が増え、酸性度が高く(pHが低く)なってくると、牛乳は固まって姿を変え、ヨーグルトと呼ばれるようになるわけです。なお、
実際に売られているヨーグルトにはゼラチンや寒天が入っているものが多いですが、これはヨーグルトをより堅くして、食べやすくしたり舌触りを良くしたりするために入れているようです。

これを確かめる実験方法ですが、牛乳に、実際にpHを測りながら乳酸を加えて固まるかどうかを見ればわかると思います。カゼインは試薬としても販売されていますので、これを購入し、水に溶かして酸を加える実験をすればより正確な結果が得られるでしょう。

(SY) 2008/06/09