Q307★合金を単体の金属にするために、含まれてる金属の融点まで加熱したのですが、うまくいきませんでした。これは何故ですか?また、合金を単体の金属にする方法もできれば教えてください。


ご質問には何の合金かの記述がありませんので、一般的な合金についてお答えします。ある金属に他の金属、または金属以外の物質(非金属)を混合して金属状になったものが合金です。一般に合金の融点は、構成する金属単独の融点より低くなりますが、両方の金属が原子という非常に小さいレベルで混ざり合っているので、融点以上の温度にしても両成分を分けることはできません。しかもたいていの合金は,固体状態より融点以上で溶融した液体状態の方がさらによく混ざり合っています。
 合金を単体の金属にする方法について、現在のところ、簡単ないい方法はありません。水とアルコールの混合物を分けるのに「蒸留」という方法がありますね。これは混合した2つの成分の沸点(沸とうする温度、気体になる温度)の違いを利用します。合金も蒸留で分けることは原理的にはできるでしょうが、いくら圧力を下げても、とても高い温度が必要でかなり難しく、簡単な方法ではありません。もちろん、これが可能な蒸留装置もあります。
合金の片方の成分のみが特定の物質に溶けるような場合,片方の成分を取り出せることができると考えられます。たとえばナトリウムをひとつの成分とする合金では,これを酸やアルカリ溶液で抽出すれば成分を分けることができるでしょう。
もう一つ例を挙げましよう。奈良の大仏は今では黒光りしていますが,創建当時は金色だったそうです。表面が金メッキされていたのですね。この金メッキに,金と水銀の合金が使われていたということです。水銀は常温で液体の特殊な金属ですが,水銀の合金はアマルガムと呼ばれます。金属の割合によって,液体のようなアマルガムを作ることが出来ます。金も水銀と溶けあって金アマルガムになります。金アマルガムを大仏全体に塗り付けた後,周りから火をたき合金の成分である水銀を蒸気にして取り除き,後に金だけを残したといわれています。これも合金から一つの成分だけをとり出した古い巧みな例と考えることが出来ます。ただし、水銀は猛毒ですので,現在はこのような方法を利用することはありません。

(YN & MA) 2008/07/10 - 2020/01/24