Q314★ボールペンの黒インクがなぜ紫がかっているか教えて下さい。


ボールペンとは、ペンの先にボールがついていて、そのボールが回転することで、ボールの内側にあるインクがボールに付き、それが紙の上につくために、「書く」ことができるという仕組みになっています。
さて、ボールペンでも、インクの種類によって「油性ボールペン」というものと「水性ボールペン」に分類されます。最近、その他に「ジェルインクボールペン」というものもありますが、今回は上の2つの「油性ボールペン」と「水性ボールペン」について考えてみましょう。

ボールペンは「油性ボールペン」がはじまりで、1950年代から広く使われています。油性ボールペンのインクの主成分は、「色材」と呼ばれるものと、「溶剤」と呼ばれるものの2つがあります。色材というのはインクに色をつける材料です。溶剤というのは色材を溶かす液体で、一般にアルコール類です。つまり、色材をアルコールのような溶剤に溶かしたものがインクです。溶剤に溶ける色材は、一般に「染料」とよばれます。この名前のほうがなじみ深いかもしれませんね。

黒の油性ボールペンのインクは、黒の「色材」をアルコール類に溶かしたものということになりますが、実際には本当に黒い染料が世の中にありません。現在使われている黒い染料だけでは薄い黒色しか出ません。そこで、濃い黒に見えるように黒以外の他の色の染料が混ぜられています。実際に使われている黒ボールペンのインクには「紫色」と「黄色」の染料が加えられています。紫色と黄色は「補色」の関係で、この2色の染料が混ざると黒色になります。黒ボールペンで紙に字を書いたとき、紙の表面の状態によって、たとえば紙が少しあらい場合は、アルコール類が蒸発する過程で黄色の染料が先に染み込みやすいので紫色に見えることがあります。また、黒ボールペンのインクが漏れたのをティッシュペーパーにアルコールを含ませて拭くと、拭き取ったティッシュペーパーは、はっきりと紫色になっています。

以上の油性ボールペンに対して水性ボールペンというのは、色材を水に混ぜたものです。「混ぜた」と書いたのは、色材は水に溶けませんので、細かい粒状の色材を水の中に分散させています。このように水に溶けない色材を「顔料」といい、水に分散させるために顔料の粒の表面を水になじむように特殊な処理を行っています。
このように、油性と水性のボールペンでは、同じ黒でも使われている色材がちがいます。水性ボールペンの場合は、本当に黒い顔料が使われているので、まちがいなく黒く見えます。


(YN & TK) 2008/10/20 - 2020/01/24