Q317★なぜ熱濃硫酸には酸化作用があって、普通の(常温の)濃硫酸には酸化作用がないのですか? 熱と酸化作用の因果関係を教えてください。


普通の濃硫酸の性質として、脱水作用、吸湿性などがあります。典型的な実験で、お砂糖に濃硫酸をかけると、砂糖が黒くなり、炭化されます。この現象は脱水作用によるものです。常温の濃硫酸は脱水作用が強力なので、酸化作用を示しません。しかし、濃硫酸H2SO4を熱すると三酸化硫黄SO3と水H2Oに分解します。そのSO3が強い酸化性を示すため,熱濃硫酸は強い酸化作用を示すのです。常温では濃硫酸からSO3を生じる反応はほとんど起きません。逆に,SO3はH2Oと反応してH2SO4を作ります。

ちなみに,Hよりもイオン化傾向の大きい金属をH+により酸化する反応は硫酸以外の酸でも起こる反応なので「酸性」による反応といい,三酸化硫黄はHよりもイオン化傾向の小さい金属も酸化できるので「酸化作用」による反応といって区別することが多いようです。たとえば,希硫酸を亜鉛Znと反応させると,水素H2を発生させながらZnをZn2+に酸化します。このとき,硫酸は酸化作用を示すとは言わず,希硫酸の酸性によると言います。塩酸や酢酸のような酸でも,酸でありさえすれば同じ反応を起こすからです。もとは同じものでも,条件によって反応に関与する化学種が異なることがあることを理解しましょう。

(TY) 2008/11/17