Q332★(1)ボルタ電池で希硫酸に亜鉛板を漬けた場合、亜鉛板から硫酸に亜鉛イオンが溶け出すと同時に何故その場で電子が水素イオンに渡され水素ガスが発生しないのですか? つまり亜鉛板周囲から水素ガスが発生せず、回路を電子が移動して銅板側で水素ガスがなぜ発生するのかがわかりません。(2)ダニエル電池ではなぜ硫酸亜鉛水溶液と硫酸銅水溶液が混合してしまうと放電しないのでしょう? 硫酸銅が亜鉛板に接触してしまうとその場で銅が析出し、亜鉛が溶け出してしまうからですか? もしそうだとするとダニエル電池とボルタ電池の違いがわかりません。


1つ目の質問,「亜鉛板から硫酸に亜鉛イオンが溶け出すと同時に何故その場で電子が水素イオンに渡され水素ガスが発生しないのですか?」についてですが,通常の実験の仕方であれば亜鉛周囲からも水素ガスが発生します。あなたの予想は正しいのです。同時に,電子は回路を銅板側にも移動して,銅板側でも水素ガスを発生させます。そして,亜鉛板上で水素イオンに電子を渡して水素ガスを発生させるより,銅板上で水素イオンに電子を渡して水素ガスを発生させる方が起こりやすいため,電子は亜鉛板から銅板方向に導線上を移動することになります。水素イオンの水素分子への還元反応に対して,亜鉛より銅の方が良い触媒として働くからであると説明されることもあります。
ダニエル電池とは違い,ボルタ電池の負極は亜鉛ですが,正極の銅は見かけ上変化しないので,本当の正極は水素電極であると考える方が正しいのです。したがって,亜鉛より銅の方がイオン化傾向が小さいから銅板上で水素ガスが発生するというような説明はできません。

2つ目の質問についてですが,
ダニエル電池では,硫酸銅が亜鉛板に接触してしまうと,亜鉛の溶解と銅の析出する反応が亜鉛板上のみで起こってしまうため外部回路へ電流が流れなくなるという自己放電現象が起こります。すなわち,電池になりません。
ボルタ電池について同じように考えると,ボルタ電池では,水素イオンが亜鉛板に接触してしまうと,亜鉛の溶解と水素ガスが発生する反応が亜鉛板上のみで起こってしまうため外部回路へ電流が流れなくなるという自己放電現象が起こります。となりますが,水素ガスの発生が亜鉛板上でより銅板上で起こりやすいため,ダニエル電池とは異なり電池になりうるわけです。

(TK) 2010/04/05