Q347★(1)天然塩と化学塩を作ってみようと思ったのですが、化学塩の作り方がわかりません。なぜ最終的に塩になるのか教えてください。(2)食品(パン)に塩水をつけるとカビが生えにくくなりました。カビの生える条件は空気があって水があって栄養があれば増えるはずです。でもこの条件がそろっているのになぜカビが生えないのでしょうか。

(1)の質問に関して

 天然塩と化学塩のどちらも海水を原料にしていますね。海水は96%以上が水分で塩分はたった3%程度です。この塩分の中には、塩の本名でもある塩化ナトリウム(化学式:NaCl)以外にも様々なミネラルが含まれています。天然塩は、海水の水分を自然に蒸発させてつくるので、NaCl以外にもミネラルがそのまま含まれています。
 一方の化学塩(食塩)は、成分の99%以上がNaClです。つまり、NaCl以外のミネラルが取り除かれてできています。どうやって取り除くかというと、まずは、海水を「イオン交換膜」という膜をいくつか並べた部屋に通すことで濃い塩水をつくります。外国から天然塩を輸入した場合は、ここから直接濃い塩水をつくります。この濃い塩水を密閉された釜の中で水蒸気の熱で水分を蒸発させてNaClの結晶をつくります。このときに、天然塩の中にあるNaCl以外のミネラルは釜の中に溶けたまま残ります。このようにして、NaClの結晶を取り出して乾燥させて「食塩」として取り出します。
塩になる理由は、NaClが結晶という規則正しい形をつくるからです。食塩はナトリウムと塩素からできていますので、ナトリウムイオン(プラス)と塩素イオン(マイナス)がお互いに引き合いながら結晶を形づくります。実験でこの結晶を作る場合は、水に食塩がこれ以上溶けない状態にした「飽和食塩水」を作って放っておくと、透明な食塩の結晶ができます。これは、飽和食塩水の水分が蒸発することで、溶けていた食塩が析出してサイコロの形のような結晶になるからです。気温や湿度、風通しなどによって水分の飛び方が違ってくるので、どのような形や大きさの結晶になるのかを観察してまとめるのもおもしろいと思いますよ。


(2)の質問に関して

良く観察されていますね。
カビが生えるための条件が、空気と水と栄養というのは間違っていません。ただし、正確に言うと、これらの条件はカビが生えるために必要な条件(必要条件)ということになります。どういうことかというと、もし仮に空気と水と栄養がそろっていても、例えばサウナ風呂のような高温環境ではカビは生育できません。このことから、カビが生育するためには、温度が適切であることも必要条件であることが分かります。同様に、あなたの実験はカビが生えるためには、塩濃度が適切であることも必要条件(のひとつ)であることを示しています。実際に、どれ位の塩濃度まで、カビが生育可能であるかを調べてみると面白いですね。余談ですが、死海や塩田のような塩濃度が極端に高い環境でも、その様な環境を好む微生物がいることが知られています。この様な微生物(好塩菌(こうえんきん)といいます)についても調べてみると面白いでしょう。

(TO & TK) 2013/07/25