Q351★貝殻に塩酸を加えると、なぜ二酸化炭素が発生するのですか。 貝殻の主な成分は炭酸カルシウム (CaCO3) で,塩酸は塩化水素 (HCl) の水溶液ですので,貝殻に塩酸を加えて二酸化炭素 (CO2) が発生するということは,CaCO3とHClが反応してCO2が発生すると考えます. 高校の化学の教科書には,下のような反応式が示されていて,炭酸カルシウムは塩酸に溶けて二酸化炭素を発生する,となっています. CaCO3 + 2HCl → CaCl2(塩化カルシウム)+ H2O + CO2 (1) CaCO3はカルシウムイオン (Ca2+) と炭酸イオン (CO32-) からできています.また,塩酸の中では,HClは水素イオン (H+) と塩化物イオン (Cl-) に完全に分かれています. また,CO32-は,H+が多く存在する(酸性)溶液では,これを受け取って炭酸 (H2CO3) という分子にまで変化する性質があり,さらに,H2CO3は,H2OとCO2に変化する性質があります. これをまとめると下のようになります. CO32- + 2H+ → H2O + CO2 (2) CaCO3はCa2+とCO32-が存在して,はじめて,水に溶けない安定な形で存在することができます.したがって,上の反応でどんどんCO32-が奪われていくと,Ca2+もどんどんCaCO3から出てくることになります. 式(2)の両辺に,実際には反応していないCa2+と2Cl-を加えると式(1)の形になります. ただし,水溶液中では,HClはH+とCl-に,CaCl2はCa2+と2Cl-に,それぞれ完全に分かれていることに注意しなければなりません. 生成したCO2は,一部は水溶液中に溶存しますが,溶解度が低いためほとんどは大気中へ抜けて行ってしまって,二酸化炭素が発生している様子が観察できるのです. (KT) 2014/09/02 |