Q355★マヨネーズの乳化について実験をしています。マヨネーズが乳化する時の酢と塩の相乗効果について教えてください。

乳化作用を起こす原因を卵黄に特定し、水・油・卵黄の投入順序や撹拌速度、入れる油の量などを変えて乳化の状態を調べていたのですが、どうしても市販のマヨネースのような粘りや硬さが出ないため、諦めて最後に酢と塩を混ぜて撹拌したところ、とても粘りや硬さのあるマヨネーズが出来上がりました。
そこで(1)(水+卵黄)+油、(2)(酢+卵黄)+油、(3)(水+塩+卵黄)+油、(4)(酢+塩+卵黄)+油 で再度実験をおこなったところ、(4) >>>>>>> (3) (2) > (1) の順で粘り・硬さに差が見られました。
(1)はクリーミードレッシングのような状態で、顕微鏡で見ると油の粒が大きく不揃いあったのに対し、(2)・(3)はカスタードクリーム状、(4)は市販のマヨネーズ以上に粘りやつやがあり、油の粒はとても細かく均一でした。
その後調べたところ、
塩にはリポタンパク質(卵黄レシチンと一緒に乳化をする働きがある)を分解する働きがあることがわかりました。
また、粒子を液体中に安定的に分散させる(凝集をふせぐ)には、粒子表面を帯電させる必要があること、食塩は水中ではナトリウムイオンとなりプラスの電気を帯びること、タンパク質はPHの影響を受けて電荷状態が変化し変性することがわかりましたが、酢と塩の相乗効果がどのようにして起こっているのかが理解できません。その理由を教えていただけますでしょうか。


 大変興味深い実験をしていますね。ご存知の通り、マヨネーズは水の中に小さな油の粒が分散された乳化状態になっています。この乳化は、油汚れを落とす洗剤でもみられ、界面活性剤(乳化剤)が重要な鍵となっています。マヨネーズでは、すでに検討した結果からわかるように、卵黄中に含まれるタンパク質がその働きをします。そして、通常プラスマイナスのイオンのバランスが取れて電荷を帯びていないタンパク質ですが、酢を加えることで、プラスマイナスのバランスが崩れ電荷を帯びることで界面活性剤として働くようになります。ここで注意してもらいたいのですが、界面活性剤からなる小さな粒は食塩などの塩(プラスイオンとマイナスイオンからなるもの)を添加することで、不安定化することが知られています。この現象は、海水では石けんがなかなか泡立たないことと一緒です。しかし、実験結果からは食塩を添加すると一番効率よく安定な乳化状態となることと矛盾しています。実は、卵黄の中には「塩溶解性タンパク質」という、純水よりも適切な濃度の食塩水のほうがよく溶けるタンパク質が含まれており、このタンパク質が先ほどの乳化剤としてよく働くのです。そのため、塩と酢と卵黄を混ぜたのち、油を加えることで一番粘りのあるマヨネーズになったのです。
 塩の量を変えてみるとマヨネーズの硬さにどのように変化するか調べてみるのも面白いかもしれませんね。

(JM) 2016/08/26