Q358★無機化学における沈殿に絡む理論を教えてください。
炭酸塩なら2価の陽イオンと陰イオンがクーロン力で引き合いイオン化しづらいため沈殿するようなのですが、硫酸塩については沈殿しないほうが多いことを知り、弱酸由来なのか強酸の話も絡むのかがわからなくなっています。
ある本ではAl(OH)3などの水酸化物イオンは脱水縮合することで巨大分子を形成するから沈殿するという記述がありました。では炭酸塩はなぜ沈殿するのだろう、硫酸塩はなぜあまり沈殿しないのだろうかと悩んでいます。
沈殿に絡む理論を、たとえば、電気陰性度や原子半径やクーロン力をどの順序で考えていけばいいのかなど、まとめて教えていただけないでしょうか。

大変興味深い点に着目していますね。

塩「えん」の溶解性は一般に、陽イオンと陰イオンの「イオンの価数」と「イオンの半径比」が重要です。
「イオンの価数」は陽イオンと陰イオンのクーロン力に関係しており、「イオンの価数」が大きくなるとイオン間の引き合う力であるクーロン力が大きくなり、沈殿が生成しやすくなります。つまり、多価イオンよりも一価のイオンの方が比較的溶解しやすいということになります。
一方、「イオンの半径比」ですが、陽イオンと陰イオンの大きさ、つまり「イオン半径」が近いと沈殿が生成しやすくなります。大小異なる二種類のボールを箱の中に詰めることを想像してください。二種類のボールが同じような大きさの場合、隙間なく箱に詰めることができると思います。一方、二種類のボールの大きさが大きく異なる場合では、きれいに箱に詰めることが難しくなります。このように似たような大きさの陽イオンと陰イオンとの組み合わせでは、塩の結晶内でイオンが密に詰まることができるため沈殿が生成しやすくなります。
具体的な例で考えてみます。まずは、アルカリ土類金属イオンと炭酸イオン・硫酸イオンからなる塩についてです。炭酸イオンと硫酸イオンの半径はそれぞれ0.19 nmと0.23 nmです。一方、二価の陽イオンであるアルカリ土類金属のイオン半径は、Be2+; 0.031 nm, Mg2+;0.065 nm, Ca2+; 0.099, Ba2+; 0.135 nmであり、すべての陽イオンが陰イオンよりも小さくなります。それらのうち、「イオンの半径比」が大きく異なるBeSO4やMgSO4は水に可溶です。一方、これらの陽イオンからなる炭酸塩(BeCO3, MgCO3, CaCO3, BaCO3)は水に難溶性です。次に銅イオン・鉛イオンと炭酸イオン・硫酸イオンからなる塩についてです。陽イオンのイオン半径はCu2+; 0.065 nm, Pb2+; 0.19 nmであるため、硫酸銅は水に溶解するのに対し、硫酸鉛は水に不溶となります。
このように塩の水溶性に関しては、陽イオンと陰イオンの「イオンの価数」と「イオンの半径比」が重要となります。

(JM) 2017/10/04