Q361★コロイドについて、いくつか質問があります。
(1)塩化鉄をまず沸騰水に入れますが、塩化鉄が水と反応する理由がわかりません。
たとえば、塩化銀であれば電気陰性度の差が1.1ということから、イオン結合であるにもかかわらず共有結合のように振る舞い沈殿するわけですが、塩化鉄も電気陰性度差は1.2程度です。沸騰水に入れるのは、反応速度を高めるのみならず、塩化鉄の結合を解く効果があるのでしょうか。
(2)水酸化鉄は正に帯電すると言われますが、その理由も教えてください。
(3)なぜコロイド透析の実験で塩化鉄を用いるのか、教えてください。


(1) 電気陰性度の差だけで、水に溶解するかどうかを判断することはできません。たとえば、電気陰性度の差が大きいLiFはあまりにも静電気的な結びつきが強くなるので、結晶を作るイオンをバラバラにするために必要エネルギー(格子エネルギー)が大きくなり、水に溶けにくくなります。水への溶けやすさは、この格子エネルギーや、イオンの水のじみやすさ(水和)などのたくさんのパラメータがかかわっていますので、溶解度や溶解度積でしか比べることができません。また、塩化鉄(III)は、常温の水によく溶け、水中でFe3+イオンとCl-イオンが生成しますが、その溶液はそのままではコロイドにはなりません高い温度をかけることによって、急激にFe3+イオンが水と反応し、Fe(OH)3のコロイドを生成します。

(2) Fe(OH)3コロイド粒子の水に接している表面では、OH基がむき出しになっています。ここに未反応のFe3+が余分に付着することにより、コロイド粒子表面は正に帯電します。またFeCl3を沸騰した純水に溶かすと、Fe3+イオンと水との反応 Fe3+ + 3H2O → Fe(OH)3 + 3H+ が進行し、溶液は酸性になります。したがって表面のOH基にはH+が付着しますので、やはり正に帯電します。

(3) コロイドを作る金属は塩化鉄(III)以外にもあります(興味があればぜひ調べてください)。塩化鉄(III)を使用する理由は、学校の先生に直接聞くほうが正確だと思いますが、おそらく塩化鉄(III)の毒性が低く安全であること、また赤褐色の色を呈することから観察しやすいといった理由があるのではないでしょうか。
 
(MN & NN) 2018/05/10