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Q365★アルカリ土類金属やアルカリ金属のイオンは、NaOH水溶液に入れても沈殿しないと学んだのですが、その一方、カルシウム単体を冷水に入れると水酸化カルシウムの沈殿が生じると学びました。
カルシウムイオンとカルシウム単体という違いはありますが、両者の関係性がはっきりよくわからないので教えてください。 水酸化カルシウムの沈殿の話ですね。「溶ける・溶けない」「沈殿する・沈殿しない」という現象は、厳密には水溶液中に溶けているイオンの量(濃度)を考える必要があるので少しややこしいですね。単体のカルシウムの話がありますが、これも水に溶解した場合には、単体のカルシウムから生成するカルシウムイオンを考える必要があります。 さて、一般論としてアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンを比較すると、沈殿を形成する水酸化物を作りやすいのはアルカリ土類金属イオンになります。たとえばNaCl水溶液(水溶液中ではNa+ と Cl- のイオンになっています)をNaOH水溶液(水溶液中ではNa+と OH- のイオンになっています)に入れる場合には、下記の反応式のようになり、多くの場合、沈殿はできません。 NaCl(Na+ + Cl-) + NaOH(Na+ + OH-) → 2Na+ + Cl- + OH- ところがCaCl2水溶液(溶液中ではCa2+ と Cl-のイオンになっています)をNaOH水溶液に入れる場合には、それらの濃度によって結果が変わり、沈殿ができない場合と沈殿ができる場合があります。 CaCl2(Ca2+ + 2Cl-) + 2NaOH(Na+ + OH-) → Ca2+ + 2OH- + 2Na+ + 2Cl- (低濃度、沈殿ができない) CaCl2(Ca2+ + 2Cl-) + 2NaOH(Na+ + OH-) → Ca(OH)2(沈殿) + 2Na+ + 2Cl- (高濃度、沈殿ができる) 低濃度の沈殿ができない場合は、上記のNaCl水溶液をNaOH水溶液に入れた場合と同じです。一方、高濃度で沈殿ができる場合には、Ca(OH)2の水への溶解度を考える必要があります。 Ca(OH)2は100gの水に0.15g(25℃)まで溶けます。したがって、学校で習われた「アルカリ土類金属やアルカリ金属のイオンは、NaOH水溶液に入れても沈殿しない」というのは、NaOH水溶液やCaCl2水溶液の濃度が薄い場合に限られます。NaOH水溶液やCaCl2水溶液の濃度が濃い場合(つまり、Ca2+とOH-の濃度が高く、生成するCa(OH)2の量が水100gあたり0.15gを越える量の場合)には、上記の反応で沈殿を生成する場合があります。 さて、単体のカルシウムを水に溶かす場合はどうでしょう?この場合には、次の化学反応を考えます。 Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2 この場合は、水素とCa(OH)2が生成します。水素は気体なので泡が出てなくなってしまいますが、Ca(OH)2は水溶液中に残ります。上記のように、このCa(OH)2が、水100gあたりに0.15gを越える濃度になるほどのCaを加えた場合には、沈殿が生じる、ということになります。ただし、非常に少ない量のCaの場合には、上記の反応で生成したCa(OH)2は、 Ca(OH)2 → Ca2+ + 2OH- のように電離します。したがって、沈殿は出ないことになります。 いずれの場合にも、「カルシウムイオンと水酸化物イオンの濃度」「Ca(OH)2の溶解度(100gの水に何g溶けるかを表す量)」を考えることが重要です。 (HH & MI & NN) 2018/05/31 |