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Q377★アンタ―クチサイト(南極石)の結晶作りを自由研究で取り組んでいます。実験手順で結晶ができないため、何か手順に問題があるのでしょうか? 1)塩化カルシウム(25g)と精製水(25g)を1対1で混合 2)湯せんして混ぜる。濁りはなくなり、液体は透明でサラサラの状態 3)冷凍庫で冷やす 1日たっても液体は固まらず、結晶はできません。 南極石は,塩化カルシウムという物質が6水和物として結晶化したものです。物質が水にどのくらい溶けるかは物質の種類と温度によって決まっていて,一般には水100 gに溶ける物質の量(g)を溶解度といいます。塩化カルシウムの溶解度は0℃で約60 g/100 g-H2Oで,温度が高くなると溶解度は大きくなります。ご質問の実験では25 gの水を用いていますので,計算上は0℃では,約15 gの塩化カルシウムが溶解して,残りの10 gに相当する分は溶けきれずに固体として出てくる(析出する)ことになります。しかし,物質によっては本来,固体が析出するはずの温度になっても,すぐには析出が見られないことがあり,これを過飽和といいます。ご質問の実験では,冷凍庫で1日冷やしても結晶ができないということですので,溶液が過飽和になっているものと考えられます。過飽和状態の溶液は,本来溶かせる以上の物質を溶かしているため不安定で,ちょっとした刺激により結晶化が進むことがあります。例えば,析出させたい結晶の小さな粒を過飽和溶液に入れると,これが種となって結晶が成長する場合があります。今の実験では,冷凍庫で冷やした溶液に南極石の小さな結晶を入れて,結晶成長を促すということです。しかし,この方法はそもそも種となる結晶が手元になければできません。他には,過飽和溶液を入れた容器をガラス棒や金属の匙のような固いもので「擦る」ことで,結晶化を促す方法もあります。例えばビーカー(あるいはそれに類似したガラス製のコップ)のようなものを容器として用いているのであれば,溶液が冷たいうちに,その内壁をガラス棒のようなもので擦ってみてください。結晶の析出の仕方は溶液の濃度,容器の形状や材質,冷やし方,擦り方などで変わりますので,条件によっては粉のような小さな結晶しか析出しないかもしれません。しかし,このようにして手に入れた小さな結晶を種にしてより大きな結晶を成長させるという方法もあります。実験を繰り返してきれいな南極石の結晶を作る最適な条件を探求してみてください。大変立派な研究になると思います。 中2 (TF) 2019/08/19 |