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Q378★土に消石灰(水酸化カルシウム)とニガリ (塩化マグネシウム)と水を混ぜて土を固める三和土(たたき)という日本の土木工法があります。固まるのはこれらと空気に含まれている二酸化炭素の反応だといいますが、なぜ固まるのかわかりません。化学式で原理を教えてもらえますか。また消石灰と水や塩化マグネシウムと水の組み合わせでも固まります。こちらの理由も教えてもらえますか。 三和土が固まるという現象を細分化して考えてみますと、(1)原料となる化合物の化学変化、(2)化学反応によって生成する化合物の成長、(3)成長によって形がつくられ、そしていわゆる「たたき」の由来となる、(4)加圧により成形させる、過程に分けることができると思います。 (1)の原料の化学変化について対象となるのは、消石灰、塩化マグネシウム、そして「土」です。このうち「土」はその土地特有の混合物ですので関連する化学反応は多岐にわたります。ここでは主成分の消石灰の化学反応を例に話を進めましょう。消石灰は、ご存知の通り、空気中の炭酸ガスと反応し、炭酸カルシウムを生成します。 Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O 参考までに、ケイ酸カルシウムの生成反応 α Ca(OH)2 +β SiO2 +γ H2O →αCaO・βSiO2・εH2O +(α+γ-ε)H2O (α、β、γ、εは組成によって異なる) (2)この反応によって新たに生成した炭酸カルシウムが再配列しつつ成長し、反応の進行とともに大きくなっていきます。また、この反応では同時に水が生成します。炭酸カルシウムは中性の水にはほとんど溶けませんが(水溶解度0.014 g/l , 25℃)、そもそも炭酸ガスと反応できる環境ですと、炭酸ガスが水に溶け込んで弱酸性になることで炭酸カルシウムは少し溶解するようになり、炭酸カルシウムは部分的に溶解と同時に析出する平衡状態になります。この時、同じ炭酸カルシウムでできた比較的大きい粒ととても小さい粒が存在する場合、どちらが溶けやすいと思いますか? 実は、小さい粒の方が溶けやすいのです。その理由は、溶解と析出の平衡条件下では、粒のサイズがとても小さいと表面の割合が多くなるために析出する前に完全に溶けて無くなっていきます。しかし、大きい粒では一部が溶解しても完全に溶けきる前に析出してしまい、形は変わっても大きさは変わらず、溶けてなくなるどころか、むしろどんどん成長してしまうのです。したがって、溶解と析出の平衡状態を長く維持すると、小さい粒は溶けて無くなり、大きい粒ばかりになっていきます。(3)このようなことがあちこちで同時多発的に進行し、それらが出会うと融合してさらに大きくなり、しだいに形を作っていくことになります。この時、異物があっても、それを押しのけたり、時には取り込んだりしながら成長が進み、一緒に固まっていきます。(4)そのような状況で上から強く叩くことで空隙が減り、粒がち密につまっていき、さらに融合することによって土と一体化して固くなっていきます。 消石灰(水酸化カルシウム)(水溶解度1.7 g / l, 25℃)や塩化マグネシウム(水溶解度、無水物の場合540g/l, 20℃)などが、水があるだけで固まるのも同じような生成と成長の仕組みによります。水酸化カルシウム Ca(OH)2 も塩化マグネシウム MgCl2 も無機塩の一種で、膨大な数の Ca2+ と OH-、または Mg2+ と Cl- が電荷のバランスをとりながら交互に連続的に並んだ状態の化合物ですので、平均組成で表現されています。一度溶けてばらばらになっても同じ仲間のところに同じルールで並びやすいという性質があり、特に、とてもきれいに規則的にならんだ状態を結晶といい透明な宝石のような塊になります。必ずしも結晶のように完璧に規則的でない場合でも部分的には結晶のように積み重なって、固まることができるのです。 以上のように、固まる仕組みは化学反応そのものによるものではなく、化学反応によって生成する化合物の析出と成長、もしくは水に溶解していた化合物の析出と成長によるのです。 高2 (SW) 2020/03/27 |