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Q382★酸素は水には溶けないという性質を持っている事は知っています。ですが、魚はえら呼吸をして酸素を体に入れています。ということは水の中に酸素はあるのでしょうか。そうなると、酸素は水に溶けるということでしょうか。
また、魚は水の中にある酸素で生きていますね。では、水の中には酸素が何%あるのでしょうか。


 地球上の多くの生物は体内に酸素を取り込むことでエネルギーを得ています。水の中で暮らす生物の多くも、酸素が必要です。私たちは肺で空気中から体内に酸素を取り込みますが、ご質問にもあるように、魚類はえら呼吸により酸素を取り込みます。では、その酸素はどこにあるのでしょうか。実は酸素も水に溶けるのです。ご質問の文面には「酸素は水には溶けないという性質を持っている」とありますが、これは恐らく、色々な気体の中で、酸素は比較的水に溶けにくいという意味で「溶けない」と書いてある本などを参考にされたのではないかと思います。塩酸という薬品を知っていますね。塩酸は塩化水素という気体を水に溶かした薬品です。あるいは、アンモニア水という薬品も理科で習ったことがあるのではないでしょうか。これはアンモニアという気体を水に溶かしたもので、塩化水素もアンモニアも水に大変よく溶ける気体です。これらと比べて酸素は水にあまり溶けません。とは言っても、まったく溶けないわけではなく、少しは溶けます。どのくらい溶けるかは、水の温度や気圧によって変わるのですが、例えば1気圧の空気中で25℃の水1 Lには、最大で約8.1 mgの酸素を溶かすことができます。この数字は塩化水素やアンモニアと比べると非常に小さい値ではありますが、水中の生物が体内に酸素を取り込み、生命を維持するには十分な量です。つまり、酸素は水に溶け、魚は水に溶けた酸素を取り込んで生きています。

 水の中に酸素がどのくらい溶けているのかを表すために、DO(溶存酸素の意味でdissolved oxygenの頭文字です)という指標が用いられています。例えば、生活排水のような、微生物にとって栄養となるような物質をたくさん含んだ水が河川や海に流れ込むと、微生物が大量に繁殖して水中に溶けている酸素を消費します。そうするとDOが小さくなって魚が住めない環境になってしまいます。このように、DOは水資源の環境汚染の程度を知る大切な指標です。

 水にも酸素などの気体が溶けていることが確認できる簡単な実験を紹介します。水道水をくんで、しばらく室内で放置してから冷凍庫で凍らせると、中に気泡がたくさん入って白く濁った氷ができると思います。この気泡は、水に溶けていた気体が氷の中に閉じ込められたものです。一方、水道水を一度沸騰させてから、ラップなどで空気にできるだけ触れないように注意しながら室温に戻します。これを冷凍庫で凍らせると先ほどよりも透明度の高い氷が得られるはずです。温度が高い水には気体が溶けにくいことを利用して、沸騰させることで水に溶けていた気体を追い出したため、氷の中に気泡ができず氷が透明になったのです。ただし、ゆっくり凍らせると気体を追い出しながら氷になりますので、沸騰させなくても比較的透明度が高い氷になります。実験されるのであれば、条件を色々と変えて氷をつくり、結果を比較してみるのが良いと思います。

中1 (TF) 2020/09/11