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Q392★無機化学についての質問です。教科書に水銀は他の金属を溶かしてアマルガムをつくると書いてありました。調べたら、鉄やマンガンなど、アマルガムにならない金属もあると書いてありました。水銀と合金をつくる金属とつくらない金属とでは何が違うのでしょうか。具体的にアマルガムにならない金属を教えてもらえると嬉しいです。 まず、アマルガムの説明からです。アマルガムとは水銀と他の金属からなる合金です。常温で硬いもの、やわらかいもの、液体のものが存在します。水銀は液体ですので、固体の金属を溶かして合金になります。ところが、どんな金属でも溶けるわけではなく、鉄・白金・タングステン・ニッケル・マンガンなどの高融点金属との間では溶けにくく、合金になりにくい性質があります。参考文献の「日本鉱業会誌」の論文に水銀への金属の溶解性がまとめられています。溶解性が低いものはもちろんアマルガムになりにくいということです。アマルガムになるものとならないものの境界をはっきりさせることはかなり難しいですが、おおよそ水銀に対して0.001~0.01 wt%溶ける金属が境界になるのかと思われます。 参考までに、下記に水銀に対する15~20℃における各溶解度を示す金属を表記いたします(日本鉱業会誌, 82(933), 35-51 (1966) 参照)。 水銀に対して10 wt%以上溶ける金属: In, Tl 水銀に対して1~10 wt%溶ける金属: Cd, Cs, Zn, Bi, Pb, Rb 水銀に対して0.1~1 wt%溶ける金属: Sr, Sn, Na, K, Ba, Ca, Mg 水銀に対して0.01~0.1 wt%溶ける金属: Au, Ag, Li 水銀に対して0.001~0.01 wt%溶ける金属:Cu, Mn, Al, Ge, Be 水銀に対して10−7~10−5 wt%溶ける金属: Fe, Ni, Co, Mo, Cr, Ti, U, V, W ところで、アマルガムについては昔から人類がかなり知恵を絞ってさまざまなところで使われてきました。奈良時代に造られた奈良・東大寺の大仏の金メッキには金アマルガムが使われたといわれています。金アマルガムを塗布した後、加熱により水銀を取り除いたようです。大量の水銀の蒸気が発生したと思われます。近年では、虫歯の治療に銀やスズの入った水銀のアマルガムが使用されていましたが、水銀の危険性からアマルガムを使用せず、光硬化樹脂が虫歯の治療に使われるようになってきました。アマルガムは歴史的にも調べてみるとおもしろいトピックスですので、是非いろいろと調べてみたら良いかと思います。 (参考文献) 新村 出 編、広辞苑第七版、岩波書店(2018) 向正夫, 小浦延幸, 「アマルガムの物性とアマルガム製錬」, 日本鉱業会誌, 82(933), 35-51 (1966) 渡邉泉, 「重金属のはなし - 鉄、水銀、レアメタル」, 中公新書 (2012) 高3 (SK) 2021/06/3 |