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Q398★ドロマイトと硫酸マグネシウムを泥のような軟弱な土に混ぜると固化するそうですが、それはなぜですか。漆喰などとは違う原理なのでしょうか。仕組みを教えてください。



 まず、理解のために、簡単なカルシウム系化合物による固化の過程を解説します。

 漆喰は消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2)を主成分としており、その固化は、空気中の二酸化炭素を吸収し、炭酸カルシウムになることで起こります。つまりその固化には長い年月を必要とする一方で、炭酸カルシウムは水に溶けないので、漆喰の壁は長持ちします。

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

 一方で、生石灰(酸化カルシウム、CaO)は土壌固化剤として使われます。その固化の過程は多岐にわたりますが、基本的には速やかにおこるCaOの加水分解によるCa(OH)2の生成から始まります。したがって漆喰と同様、炭酸化による固化過程も含まれますが、土壌においてはポゾラン硬化反応とよばれる過程が重要であるとされています。それは、Ca(OH)2と、土壌中のシリカ(酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)が反応し、それぞれケイ酸カルシウム水和物、アルミン酸カルシウム水和物を生成することで、粒子間が固定されるというものです。詳細は文末に示した参考資料等をご覧ください。
 ここで、Ca(OH)2が関与するのであれば、安全な消石灰を用いた方がよいのではないかという疑問が生じますが、CaOが加水分解する際の発熱(ものすごく熱くなります!)が一連の固化反応を促進するとされています。特に寒冷期には重要であるようです。

 ここでようやく、質問のドロマイトに話を戻します。
 ドロマイトは、CaMg(CO3)2の組成で知られる鉱物ですが、土壌固化剤として用いるものは、軽焼ドロマイトと呼ばれるドロマイトを焼成して得るCaO・MgOの組成を持つもののようです。お気づきのように、CaOを含んでいますので、そちらの固化への関与は上述の通りですが、酸化マグネシウム(MgO)も、その加水分解によって生じた水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)がポゾラン硬化反応と類似した過程で固化に関与するとされています。
 生石灰を用いる土壌固化は有効ではあるものの、生じるCa(OH)2によって、その土壌が強塩基性(飽和Ca(OH)2水溶液のpH = 12.4)になり、周辺の環境や植生に対して悪影響を及ぼすという問題があります。軽焼ドロマイトと硫酸マグネシウム(MgSO4)を混合して用いると、生じるCa(OH)2が水に難溶な二水石膏(CaSO4・2H2O)になります。また、Mg(OH)2の塩基性はCa(OH)2に比べて強くありません(飽和Mg(OH)2水溶液のpH = 10.5)。そのため、軽焼ドロマイトの使用は土壌pH上昇の抑制に効果があるとされています。

参考文献
1) 小関宣裕・桐山栄・木戸健二, 石灰および石灰複合系固化材による地盤改良, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, 12, 512-515 (2005).
https://doi.org/10.11451/mukimate2000.12.512
2) 山田哲司, 酸化マグネシウム改良土の固化機構とその応用に関する研究, 関西大学 (2015).
http://doi.org/10.32286/00000151

高3 (YM) 2022/2/22