.

Q402★ダニエル電池に関する質問です。1)負極側に硫酸亜鉛水溶液を使用しますが、起電力を保つために薄くした方が良いと説明を受けました。どの程度まで薄めるのがよいのでしょうか。ただの水ではだめなのでしょうか。水でも正極側に電解質水溶液があるので、電流は流れるような気がします。2)負極の亜鉛と硫酸亜鉛溶液にあるのは、どっちも亜鉛です。イオン化傾向は同じはずなのに、なぜ亜鉛は電子を放出してイオンとなるのでしょうか。

1) の回答

まず、なぜ硫酸亜鉛水溶液を薄めて使用するのが良いのでしょうか? この点は、硫酸亜鉛水溶液の濃度が高いとなぜ良くないのか、と逆に考えてみるといいですね。硫酸亜鉛の濃度が高いとは、亜鉛イオンZn2+が多く存在するということです。この場合、単体のZnが溶けにくくなってしまいます。したがって、硫酸亜鉛の濃度が低いのが良いということになります。 ですが、ただの水にするのは好ましくありません。Zn2+を生じやすくするには、陽イオンとペアをなす陰イオンの存在が重要です。陽イオンであるZn2+は必要ではないですが、硫酸イオンは必要なのです。そのため、ダニエル電池では硫酸亜鉛の濃度をゼロにすることはありません。では、Zn2+は含まれず、硫酸イオンだけが存在するような状況を作ることはできるでしょうか? 硫酸亜鉛の代わりに硫酸ナトリウムを用いると、Zn2+はなくて硫酸イオンだけがあるという状況を原理的には作れますね。


2) の回答

イオン化傾向とは、金属が溶液と接して陽イオンになろうとする傾向のことだと説明されます。もう少し詳しく言うならば、「単体の」金属が「別の元素の陽イオンを含む溶液」とともに存在するとき、その金属が陽イオンになり、含まれている陽イオンが単体の金属になろうとする傾向です。つまり、ある金属がイオン化するかどうかは相手次第なのです。 今回のダニエル電池の場合、負極である亜鉛の比較相手は、正極に用いられている銅になります。イオン化傾向は、Cu < Znの順序です。これは、亜鉛の方が銅よりもイオンになりやすく、銅イオンの方が亜鉛イオンよりも単体になりやすいことを意味します。このため、Zn2+が生じつつ電子が放出されます。この電子をCu2+が受け取って単体のCuになります。こうして電子の受け渡しが行われ、電流が発生します。 亜鉛の相手を銅ではなくアルミニウムに代えてみたらどうでしょうか? うすい硫酸に亜鉛板とアルミニウム板を入れるとどうなるでしょうか? やはり電池ができますが、イオン化傾向はZn < Alの順序ですから、この場合は正極と負極が逆になります。また、ダニエル電池の場合とは異なり、Zn2+が電子を受け取って単体のZnになると考えられます。このように、どちらの単体の金属が陽イオンとなって電子を放出するかどうかは相手によって決まります。

中3 (SK) 2022/11/17