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Q418★電池のしくみに関する質問です。イオン化傾向が強い金属と、イオン化傾向が弱い金属を繋ぐと、電子の流れが生じるという理屈だと思うのですが、そもそも金属は元素全体の中でも陽イオンになりやすいものなので、それよりは金属と非金属をつなげた方が大きなエネルギーが取り出せる気がする のですが、そういった電池はないのでしょうか?普通の電池は金属同士、燃料電池などは非金属同士だと思ったので、疑問が生じました。 ご質問ありがとうございます。 質問の答えを先に申し上げると,金属電極と非金属電極をつなげた電池は確かにあります。 理解を助けるため,まずは電池の仕組みについて軽く触れます。例を挙げてボルタ電池で説明すると,亜鉛板(=陰極)が希硫酸(=電解質)に溶けて亜鉛イオンと電子に分離する「酸化反応」と,陰極から導線を通じて移動した電子が溜まっている銅板(=陽極)に希硫酸中の水素イオンが接触して水素が発生する「還元反応」が同時に起こっています。 質問の中にあったイオン化傾向は正確に言うと「ある電解質中での酸化還元反応の起こりやすさ」を示しています。ある二つの金属を比較した時,イオン化傾向が大きい方が酸化反応を起こしやすい,ということになります。亜鉛は水素よりイオン化傾向が大きいので,亜鉛イオンになって電子を電解質中の水素イオンに電子を受け渡しやすい(=亜鉛の溶解)ということです。一方,陽極の銅板を希硫酸中に浸しても溶けずになにも反応しないのは,水素よりも銅のイオン化傾向が小さいためです。これは専門用語で言うと,その物質の「酸化還元電位」の大小を比較していることと同じです。イオン化傾向は金属の中での酸化還元電位の順位を示したものにすぎませんので,必ずしも非金属が全ての金属よりも順位が低いわけではありません。さらに,電解質の種類によってもこの値は変わります。以上のことから金属・非金属にかかわらず電極の酸化還元電位の差があればエネルギーを取り出せる組み合わせになりうる,ということになります。 実際,身の回りで使われているボタン電池やコイン型電池は,陰極にリチウムや亜鉛のようなイオン化傾向が大きい金属,陽極に二酸化マンガンや空気(酸素;電池に空気穴がある)が使われているものがあります。ただし,これらは必ずしも大きなエネルギーを取り出す意図で金属と非金属をつなげているわけではありません。ちなみに質問には「燃料電池は非金属同士」と書かれていますが,実際には電極としてではなく酸化還元反応を促進するための「触媒」として金属(特に白金のような貴金属)が使われていることがほとんどですので,全く金属が関わらないことはほとんどないでしょう。 高2 (SH) 2024/07/05 |