Q44★生理的食塩水やリン酸バッファーなど等張溶液のpHを変えたいときに、HClやNaOHなどを用いてpHを調整すれば浸透圧は変わってしまうのでしょうか?また、生理的浸透圧を保ったまま、pHを変えるにはどのような方策があるのか教えてください。計算式など公式が存在するのなら教えてください。


 浸透圧は半透膜(溶媒分子は通すが大きな溶質分子は通さないような膜)を隔てて溶媒と溶液(溶質分子を含んだ溶媒)が存在する時に生じます。そして、その浸透圧は、溶質の種類に無関係で、一定体積の溶液中の溶質粒子の数に比例します。浸透圧(Π)は、気体の状態方程式(PV=nRT)と同じ関係式で表すことができます。すなわち、ΠV=nRT(単位系、atm、l、mol、Kも同じです)となります。ですから、溶質のモル数、温度、液の体積さえ変えなければ、理論上、浸透圧はpHを変えても変化しないことになります。

 生理的食塩水のNaCl濃度は0.15 Mです。リン酸バッファーの等張溶液(PBS, Phosphate Buffered Salineの略ですが、このことですね?)を作るときは、普通0.01 Mのリン酸1ナトリウム溶液と0.01 Mのリン酸2ナトリウム溶液を混合してpHを調整したのち、その溶液にNaCl濃度が0.15 MになるようにNaClを入れて作ります。この場合、微妙に等張からは浸透圧はずれますが、細胞などを培養する際はこれで十分です。pHも含めて正確に等張にしたいときは、それをまとめた表が「実験**講座」などの本に載っています。


(KT) 2004/02/03