Q45★ダニエル電池で、負極の電解液に硫酸亜鉛を使用するのはなぜか教えてください。イオン化傾向や身近にあるもので考えると、塩化ナトリウムなどでもよい気がするのですが。


ダニエル電池は、ボルタ電池を改良した実用電池の第一号です。ボルタ電池では、負極の亜鉛が時間の経過とともにしだいに希硫酸に溶けます。水素よりもイオン化傾向の大きな亜鉛は希硫酸と反応し、水素を発生しながら溶解し、硫酸亜鉛を生成します。この反応はボルタ電池から電流を取り出さなくても進行し、電池の自己放電の原因になります。そのため、ダニエルはこの自己放電を防ぐために希硫酸に代わって硫酸亜鉛の溶液を使いました。硫酸亜鉛の溶液の中には既に大量の亜鉛イオンが存在するので、負極の亜鉛の溶解が抑制され、電池の自己放電が減りました。自己放電の少ない電池はエネルギーの保存性に優れ、いつでも必要なときに電気を取り出すことができます。
また、ダニエル電池で硫酸亜鉛の溶液に代わって塩化ナトリウムの溶液を使うことは可能です。最近の電池の実験でよく取り上げられているアルミニウム空気電池では、木炭を正極に、アルミニウムを負極に、塩化ナトリウムの溶液を電解質にしています。この例は塩化ナトリウムが電池の電解質に使えることを示すよい例です。しかし、実用電池では電池の価格、性能、耐久性などを考慮して、普及型の安価なマンガン乾電池では塩化アンモニウムを電解質に、また、高性能なマンガン乾電池では塩化亜鉛を電解質に使っています。電解質は電池の性能と耐久性に影響するため、それぞれの電池に適した電解質を使うことが重要です。電池の電極と電解質には最適な組み合わせがあり、特により大きな電流を電池から取り出すためには、イオン化傾向だけでなく、電解質のイオン導電性や電極における反応速度も重要な因子になります。そのため、ダニエル電池で硫酸亜鉛に代わって塩化ナトリウムを使った場合、電池性能の低下が起こるかも知れません。

(ST) 2004/03/07