Q51★今化学で物質量などを習っています。基本はわかったのですが、有効桁数というのがよくわかりません。問題によって整数部分だけだったり、小数点第1位だったり2位だったり3位だったりとバラバラです。問題文に有効桁数についてに指定がない時は、どうやって判断したらよいのですか?


 有効桁数という考え方は,難しいですね。特に化学ではあいまいだと思います。本来の有効数字は,測定誤差との関係から論じることなので,実際に測定をしない計算問題ではあまり意味のあることではないと思います。しかし,測定などの時は大きな意味があります。
 例えば100 mlのメスシリンダー(1 mlずつの目盛りが入っている。有効数字の桁数は100 ml未満は2、100 mlは3)で100 mlの水をはかったとします。次に5 ml のメスピペット(0.1 mlずつの目盛りが入っていて、有効数字の桁数は2)で1.2 mlの水をはかりとったとします。この両方の水を足しあわすと101.2 mlとなるはずです。しかし、100 mlのメスシリンダーを使った場合は、どんなに慎重にはかっても0.1 mlを正確に計ることはできません。むしろ0.5 ml以上の誤差があります。1 mlぐらいあるかもしれません。つまり有効数字は小数点以下にはありません(したがって、有効数字の桁数は100 ml未満は2、100 mlは3になります)。一方メスピペットは0.1 mlは正確に計ることができます。つまり小数点以下1桁めは意味のある数字であり、有効数字の桁数は2です。これら有効数字の桁数が同じでも違っていても、足したり引いたりするときは、有効数字の桁数というよりも、その位が重要な意味を持ちます。この例では、小数点以下に有効数字のない100 mlのメスシリンダーを用いているので、101.2 mlの0.2 mlは意味をなさなくなり、両方の水を足しあわすと101 mlであると表現することになります。このように一方が小数点1桁の正確さで計っていても、他方が小数点以下に正確さがないときは、その和をとると、小数点以下は意味をなさなくなります。

 一方、掛け算や割り算が伴う場合は、上記の足し算や引き算とは全く違った考えをしなくてはならず、有効数字の桁数の低い方に合わせるという大原則があります。例えば 100 mlのメスフラスコ(100 mlを小数点以下2桁目までが正確に秤量できるので、有効数字の桁数は5)に食塩2.000 g(正確に1 mgまでを秤量できるはかりで計りとったので、有効数字の桁数は4)を入れ,水を加えて溶かし,最後に正確に100.00 mlとした。そこから10 mlのメスシリンダー(0.1 mlずつの目盛りが入っていて、有効数字の桁数は10 ml未満は2、10 mlは3)に5 mlとったとすれば,その中の食塩の質量は0.10 gとなります。これは以下のように考えます。
2.000(g)/100.00(ml) = 2.000 x 10-2 (g/ml) (有効数字の桁数の低い方に合わせないといけないので、この場合有効数字の桁数は4になる)
2.000 x 10-2 (g/ml) x 5.0 (ml) = 10 x 10-2 (g) = 1.0 x 10-1(g) = 0.10 g(有効数字2桁の10 mlのメスシリンダーで5 mlを計ったので、この場合の答えの有効数字の桁数は2になる。0.10 gの最後に付ける0が意味を持つ。その前の1.0 x 10-1 (g) の、1.0が有効数字の桁数が2であることを示している)

このとき、5 mlをとるのを5.00 mlのホールピペット(5 mlを小数点以下2桁目までが正確に秤量できるので、有効数字の桁数は3)で5.00 mlとったときにはその中の食塩の量は0.100 gとなります。これは以下のように考えます。
2.000 (g)/100.00(ml) = 2.000 x 10-2 (g/ml) (上に書いたように、ここまでは有効数字の桁数4)
2.000 x 10-2 (g/ml) x 5.00 (ml) = 1.00 x 10-1 (g) = 0.100 g(有効数字の桁数が3であるホールピペットを用いて、5.00 mlを計ったので、この場合答えの有効数字の桁数は3,0.100 gの1のあとの02つが重要。その前の1.00 x 10-1 (g) の、1.00が有効数字の桁数が3であることを示している)

 以上のように、和や差では有効数字のうち一番高い位の桁で、積や除では有効数字の桁の数の一番少ない桁に合わすようにすればよいのでしょう。
 
 普通の化学の問題では,測定値が含まれている時には,問題の有効数字の桁数より一桁下まで計算し、その位を四捨五入して問題の桁数に合わせておくのがよいでしょう。計算の場合は逐次計算をせずに,式を立て,約分が出来るものは先にして,出来るだけ計算の回数を少なくするようにして下さい。



(MA & YS) 2004/05/14