Q60★部活動で透明石けん作りをしていますが、いつもオレンジ色の透明石けんができてしまい、嫌な匂いがします。使っている材料は、牛脂100ml、ヤシ油60ml、ヒマシ油10ml、水酸化ナトリウム27g、ブドウ糖80gです。どうしたら、水のように透き通って嫌な匂いのしない透明石けんができるのでしょうか? あと透明石けんはなぜほかの石けんと違い透明なのかですか?一番最初に透明石けんを作った人など透明石けんの歴史も教えてください。


 現在,市販されている透明石ケンの標準的なつくり方は以下の通りです。
 原材料は,重量比で7対3の牛脂とヤシ油を使います。専門的にいうと化学量論量の水酸化ナトリウムを加えて,ケン化し石ケンにします。量としてはご質問の中の量でいいと思います。この時,発熱する(熱くなる)ので十分注意をして下さい。また, 知っていると思いますが,水酸化ナトリウムが目に入ると失明しますのでくれぐれも気をつけて下さい。したがって,ゴーグルやめがねなどを必ずかけてください。手や指についたものは流水で10分以上洗い流してください。
 この段階で,長鎖脂肪酸ナトリウム塩(いわゆる石ケン),グリセリン,水の混合物が得られます。これにエタノールを加えて,60℃ぐらいにし,60%程度の エタノール均一溶液とします。これにグラニュー糖(砂糖)を,使用した油脂に対して 25〜30%程度の重量比で加えて下さい。あとは枠にいれてエタノール,水などを自然に蒸発させると透明石鹸の出来上がりです。
ご質問の匂いの原因は使った油脂にあります。透明石ケンでは,できた石ケンを精製しません(塩析といいます)ので,使った原料中の不純物がそのまま石ケン中に残ります。そのため油脂の純度が低いといやな臭いがします。食用の牛脂とヤシ油を使っていますか。 また,ぶどう糖はすぐに黒くなるので使わない方が良いでしょう。砂糖(グラニュー糖)を使って下さい。良い油を使ったとして も,どうしても多少の黄ばみは避けられません。色がつかないようにするには油そのものが無色透明なものを使う必要があります。また、最近は皮膚刺激性の問題からヒマシ油も使わなくなりました。
 透明石ケンが他の石ケンと違って透明なのは石ケン(長鎖脂肪酸ナトリウム塩)の結晶が析出していないからです。 結晶化すると粒が大きくなって白くなります。つまり、砂糖をいれて石ケンの結晶化を妨げることにより透明にしています。
 一番最初に透明石ケンをつくった人ですが,これはさすがにわかりません。石ケンそのものもすでに紀元前200年頃のローマ時代から知られていましたし,西暦79年にはイタリアのポンペイに石ケン工場が存在していたといわれています。我が国で透明石ケンが注目されるようになったのは,資生堂のホネケーキが発売されてからです。昭和30年代の中頃に発売されました。ホネケーキの名前のいわれは,honey+cakeから来ています。 つまり蜂蜜入りというわけです。ホネケーキの前には,ドイツから輸入されたボール型石ケンを真似てつくった,真っ黒な透明石鹸が大阪市西淀川区にあった山県石鹸(今はもうありません)により製造されています。


(RN) 2004/08/02