Q88★電離式とイオン反応式の違いは何ですか?


なかなかややこしい内容ですが,化学反応式についての理解が進んでいるとして説明します。
化学反応式とは,矢印の左側に書いてある物質が,右側に書いてある物質へ変化することをあらわしています。その中で塩が生じる反応では,プラスとマイナスのイオンが反応して塩を生じます。しかし,いきなりイオンが生じることはありませんので,反応式の左側にはそれぞれのイオンのもととなった塩を書くことになります。また,酸化還元が関係する反応では電子のやりとりもおこっています。
しかし,ふつうの化学反応式ではこれらのことをすべて書き表すとひじょうに複雑な式になってしまいます。「イオン反応式」は,このようなとき,ある塩をつくるイオンの反応,あるいは電子を他に与えるのか,他から受け取るのかをはっきりとあらわすために簡略化した反応式と考えて下さい。したがって,たとえば硝酸銀水溶液と塩化ナトリウムの水溶液との反応で,塩化銀の沈殿が生じるばあい,塩化銀の生成だけをとりだして,Ag+ + Cl → AgCl↓ とあらわすのがイオン反応式ということになります。また,銅の酸素による酸化では,銅が電子を出し,酸素が受け取ることをあらわすために,2Cu → 2Cu+ + 4e およびO2 + 4e → 2O2-とかきます。
一方,電離式はこれらとよく似ていますが,塩が成分であるプラスおよびマイナスのイオンに分かれる様子だけをあらわしたもので,反応には関係ありません。たとえば,塩化水素が水にとけ塩酸として働くときには電離しています。これをHCl → H+ + Cl とかきます。ですから電離式はひじょうに限られた場合にしか使われません。


(RN) 2004/09/02 - 2019/11/15