Q89★有機化合物の分析を習ったとき,成分元素を確認する実験のときの化学反応式やイオン反応式が記されていたのですが,「窒素の検出」のところで,「ソーダ石灰を加えて熱するとアンモニアが発生する」というところの反応の様子はどこにも出ていませんでした。この反応の様子を教えてください。


 ご質問の内容は,有機化合物の分子の中に窒素原子が含まれているかいないかを知るための,定性試験法の一つである「石灰試験法」のことではないかと思います。この方法は有機化合物の粉末を小さな試験管の中に少しとり,それに対して6倍量の酸化カルシウム(生石灰)を加えて,バーナーを用いてはじめはおだやかに加熱し,次いで赤熱すると,アンモニアが発生するというものです。この時,たとえば,水にぬらした赤色リトマス試験紙を試験管の口にかざすと青変することで,アンモニアの発生がわかります。この方法は約180年前には知られていたもので,窒素原子が含まれている有機化合物に対しては,ほとんどの場合有効です。しかし,その分子の中に窒素原子がいくつ含まれているかについては,なにも教えてくれません。それは,調べようとした有機化合物によって反応が異なり,また,含まれている窒素原子がすべてアンモニアになるかどうかもわからないからです。このように,定性試験法には詳細な反応がわかっていない場合が多くあります。また,一般化した反応式を書くことができないこともあります。しかし,多くの人がこの方法によって,窒素を検出できることを認めてきました。そのために授業の中に出てきたのだと思います。
なお,ソ−ダ石灰とは,生石灰を濃い水酸化ナトリウム水溶液に加え,加熱して水分を蒸発させたあとに残る,白い粉末のことで塩基性が強い物質のことです。こちらについても,単純な組成の化合物ではありません。


(RN) 2004/09/13