Q92★電離式の仕組みが良く分かりません。特に何の係数が文字の前に来る(例えばH2が2H+なるなど)のかが分かりません。電離式の法則性などを教えてください。


  電離式の理解の前にはまず,化学反応式をしっかり理解しておいて下さい。
化学反応式とは,矢印の左側に書いてある物質が,右側に書いてある物質へ変化することをあらわしています。その中では,それぞれの物質を構成している原子の数が,矢印の左と右とで完全に一致しています。
電離式は特殊な物質の変化を表すためのものです。すなわち,その変化とは,1)イオン性の物質(塩などです)を水に溶かしたときに,各イオンがバラバラになって単独のイオンになる。2)分子性の物質の中には,例えばさく酸などのように,水に溶かしたときにイオンとなるものがあります。このような場合に電離式が用いられます。したがって電離式では,矢印の左側に電離する前のイオン性の物質や分子性の物質をかき,右側には生じたイオンをかきます。ここで矢印の右側にかく化学式はイオンを表しますので+-の符号がつきます。そのときに,一つの原子だけでできたイオンの場合と,いくつかの原子が集まってできた多原子イオンとがあることに注意して下さい。一つだけの原子からできたイオンの場合には係数を元素記号の前にかく必要があります。一方,多原子イオンでは,その多原子イオンに含まれる同種の元素の原子の数は,元素記号の後ろに小さくかくことになります。これは分子式などとおなじです。これが原則です。
例えば水素分子は2つの水素原子からできていますので,H2とかきますが,水素イオンは一つの水素原子からできていますので,H+です。水素イオンが二つの時にはしたがって2H+としなければなりません。ただし、水素分子H2が二つのH+に電離することは実際にはおこりません。このことについては、酸化還元反応について勉強してみてください。


(RN) 2004/10/01 - 2019/11/15