Q97★分析化学の本に出ている使用試薬の硫酸(1+2)ということの意味が今ひとつ理解できません。そこには硫酸1に対して水2というような書き方がされているのですが 最初の硫酸の濃度が不明なため最終的に何molになるのかがわからないと思います。想像ですが市販の硫酸は濃度が決まっているのでしょうか?

なかなか鋭いご指摘です。
特に分析に関わる試薬などについては,ご指摘のように濃度などをすでに知っていることを前提に話しを進めていることが多いかも知れません。このことは,分析はだれがどこで行っても,いつでも同じ基準で結果が出ないと意味がないということに関係しています。したがって,何を目的とした分析か,によって使う試薬や手順をあらかじめ決めておくことが必要になります。日本では分析法や分析に使用する試薬について,日本工業規格(JIS)でこまかく決められています。またその上には世界標準としてのISO規格というものもあります。また,分析用の試薬を大量にしかも迅速に調製する必要から,ある濃度の試薬を調製するための体積をもとにしたいくつかのノウハウが使われています。硫酸(1+2)もその一つです。体積がもとのおよそ3倍になりますので,モル濃度はおよそ3分の1になることはわかりますね。濃硫酸のモル濃度は18 molL-1ですので,こうして薄めた硫酸はおよそ6 molL-1の濃度になっています。
 さて,硫酸に関してですが,現在さまざまな濃度の硫酸が市販されています。それらについてはだいたい濃度がはっきりと表示されています。ただ単に硫酸というときは,濃硫酸のことで,質量パーセント濃度が96%で,密度が1.84 gcm-3になっています。これはどの会社の製品であっても同じです。ですから,(濃)硫酸の濃度は決まっているということです。質量パーセント濃度と密度がはっきりしていますので,ここからモル濃度を計算することが可能ですね。上記のようになることを確かめてみて下さい。もし,化学の実験室へ行くことがあれば硫酸が入っている瓶を観察してみて下さい。ラベルが貼ってありますが,その中に濃度や密度あるいはその他の情報がこまかく書いてあるはずです。あるいは化学の先生に試薬のカタログを見せてもらってはいかがでしょうか。その中にもいろいろと役に立つ情報が見つかると思います。
 なお,(濃)塩酸,(濃)硝酸などについても濃度と密度が決まっています。(濃)塩酸;37% 1.19 gcm-3(濃)硝酸 70% 1.42 gcm-3

(RN) 2004/12/23