Q104★電解装置と電池の違いについて教えて下さい。

化学の教科書には,電解装置の図も電池の図も載っていたと思います。どちらの図も,2本の電極が,電解質溶液に漬けてあったと思います。これをみてもあまり違いがわからないと思います。しかし,電解装置と電池とはまったく逆の働きをします。電解装置は電気エネルギーを用いて、化学反応を起こすための装置であり,電気エネルギーを化学エネルギーへ換えているということができます。したがって,装置の外側には必ず直流電源が必要になります。電源を電解装置にある二つの電極につなぎ,電極間に電圧をかけ,電流を流すことで,電極の表面で化学反応がおこるのです。このような反応を電気分解とよびます。
一方,電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変えるものです。したがって,電池自体が電源になります。電池の中にある二つの電極をつなぐと,電極のあいだに電圧が生じ,電流が流れることになります。なぜ,電圧が生じ電流が流れるかというと,それぞれの電極の表面で,原子が一つ電子を放してイオンになったり,逆にイオンが電子を受け取って原子や分子になるという反応がおこるからです。少しわかりにくいとは思いますが,このように電解装置の中でも,電池の中でも化学反応がおこっているところは同じです。しかし,電解では外から加えられた電流によって反応は進み,電池では反応が進むことで,電流を取り出すことができる点が違うわけです。ところで,自動車のバッテリーとして使用されている鉛蓄電池は、2次電池(充電可能な電池)といい,電解装置としての働きと電池としての働きを併せもったものです。最近のさまざまな携帯電話などの小型電子機器には,2次電池がなくてはならない存在になっています。

さて,実際の例で考えてみましょう。まずは電気分解ですが,塩化銅水溶液には,電離した銅イオンCu2+と,塩化物イオンClが存在しています。これに直流電流を流すと,陰極(電源ののマイナス極がつながっている側)に引っ張られた銅イオンCu2+は,陰極で電子2個をもらい,銅原子となり電極板に付着します。一方,陽極(電源のプラス極がつながっている側)に引っ張られた塩化物イオンClは,電子を放して塩素原子Clになり,さらにこれが2個むすびついて塩素分子Cl2となって,塩素の気体として出ていきます。 これを充電反応とよびます。  CuCl2 → Cu + Cl2   また,おなじような電解装置で水を分解すれば,陽極からは酸素が,陰極からは水素が発生します。
また,電池に関して教科書によく登場するダニエル電池を考えてみます。一つの電極は銅板で硫酸銅水溶液に浸したもの,もう一方は亜鉛板を硫酸亜鉛水溶液に漬けたものを使い,間を素焼きの板で隔離したものです。この時,亜鉛板をつくっている亜鉛原子が,電子を残して亜鉛イオンになって電解液(希硫酸)に溶けていく反応がおきます。銅板の方はほとんど溶けません。亜鉛板では、亜鉛が溶けた分だけ電子の数が増えていき,その電子は導線を伝って銅板の方に移動していきます。電解液の硫酸には水素イオンが含まれています。同じ電解液の中に亜鉛イオンが生じてくると,水素は亜鉛よりもイオンになる力が弱いので,銅板に移動してきた電子とくっついて,水素ガスに変化します。こうして電子が消費されると,また亜鉛板から電子が移動してきます。電流とは電子の流れであることを習ったと思いますが(流れの向きは逆ですが),電子が二つの電極のあいだを移動していることはわかりますね。ですから電流が流れるのです。この反応を放電反応といいます。このように電池の場合は、電解装置とは逆のしくみが働いていることがわかります。電池では電極のよび方も,電気分解とは違って正極,負極となります。ここであげたダニエル電池では銅板が正極,亜鉛板が負極です。(負極)Zn → Zn2++2 e (正極)2 H + 2e → H2 
高校の教科書には,電気エネルギーと化学エネルギーとをおたがいに変換する例が,いくつもあげられていると思います。ご自分で確認してみてください。

(AY & KY) 2005/02/17