Q11★ベンゼンの模式図と特徴や歴史を教えて下さい。


 ベンゼンは1825年イギリスの有名な科学者であるファラディ(Farady)によって鯨油の熱分解により初めて見つかった化合物です。その分子式は最終的にC6H6と決められましたが、それは、当時の化学者に大きな謎を与えるものでした。それは、炭素には他の原子と結合する手が4つあり、4つの手がすべて繋がったとき安定な化合物になると考えられていたからです。2つの手でとなりの炭素原子と結合した構造をもつ化合物もありますが、その場合は不安定で、簡単に他の分子と反応して4つの手がすべて繋がった状態になってしまいます。ところがベンゼンは、その分子式からは2つの手でとなりの炭素原子と繋がっているように思われながら、非常に安定だったのです。
いくつかの構造がベンゼンに与えられましたが、最終的に、ベンゼンはシクロヘキサトリエンの二つの異性体が交互に素早く入れ替わっているものと説明したのがドイツの化学者ケクレでした。ケクレがベンゼンの構造に思い悩んでいたとき(1865年)、蛇が自分のしっぽをくわえて回りはじめた夢を見て、その構造を思い付いたという逸話が残されています。
ベンゼンの特異な安定性が最終的に説明されたのは、原子や電子など非常に小さな粒子の運動を説明する理論(量子力学といいます)が発展した20世紀になってからです。
ベンゼンの構造を示すモデルとしては、現在、中心に円を置いた六角形と六角形の辺を交互に二重線にしたシクロヘキサトリエンの構造が主に用いられています。その性質からは、中心に円を置いた構造が適切なため多くの教科書で推奨されています。ただ、学術論文ではその構造はあまりお目にかかれず、多くの場合、シクロヘキサトリエンの構造で描かれています。ベンゼンの構造を決めたケクレに敬意を表しているためではないでしょうか。



(TK) 2003/02/03