Q288★食塩水と砂糖水を見分ける実験をしているのですが、石鹸水を加えたところ、食塩水のほうだけ白いものが浮かびました。なぜ白いものが浮かぶのですか?


違いをよく見つけましたね。これは塩析と言うことばで説明するのが最もよいでしょう。文字通り塩(えん)による沈殿の析出ということです。
塩析という言葉は、広くは、何かの水溶液に他の物質を溶かすことにより、もともと溶けていた物質を析出させることをいいます。多くの場合、後から加える物質は、食塩や炭酸カルシウムのような無機の塩類や水酸化ナトリウムのような無機物質です。
石鹸は界面活性剤とよばれる分子のなかまからできています。これは水に溶かすと分子がいくつかあつまった状態で溶けます。このような状態のものをコロイド粒子といい、これが均一に散らばっている溶液を、コロイド溶液とよびます。
コロイド粒子は、ふつうその表面がプラスかマイナスを帯びており、互いに反発し合うためにくっつき合って大きくなったり沈澱したりしません。この溶液に少量の電解質(水などの液に溶かした際に、陽イオンと陰イオンに分かれる物質)を加えると、コロイド粒子と反対符合をもつイオンがコロイド粒子の表面に付着します。そのため、コロイド粒子表面の電荷が打ち消され、コロイド粒子同士の反発力が失われて、くっつき合って目に見えるほどの「かたまり」になります。
コロイド溶液である石鹸水に食塩水を加えると、石鹸より水との親和性の強い食塩(NaCl)を溶かすと、Na+イオンとCl-イオンに別れて、それぞれの周りに水の分子を強くひきつけます。そのため、それまで石けんのコロイド粒子を分散させていた水の働きが弱くなり、石けんのコロイド粒子同士が集まり固まりとなります。そのため白いものが浮かんだように見えたのだと考えられます。
一方、砂糖は電解質ではない(非電解質)なので、塩析はおきず、溶液に変化は見られなかったのでしょう。

実際に石けんを作る時は脂肪を水酸化ナトリウム水溶液で加水分解(石鹸化といいます)したあと、多量の食塩を加えるか、あるいはさらに水酸化ナトリウムを加え、塩析により石鹸を表面に浮かせるようにします。この場合、ナトリウムイオンが石鹸の成分(共通イオン)であることも大いに関係しているともいえます。

(MA & SI & TK) 2007/09/05