Q3★学校でゾルは不透明と聞きましたが、水にゼラチンを溶かしたものが不透明には思えません。ゾルとゲルは,分散質によって決まってしまうのですか?一度ゲルになってしまったものは全て豆腐のようにゾルに戻らないのですか?


 コロイドにも、いろいろの種類のものがあります。高校の教科書にも載っているのではないかと思いますが、分散コロイド、会合(ミセル)コロイド、分子コロイドなどです。墨汁(分散コロイド)や牛乳(会合コロイド)は、ご存知のように不透明ですが、ゼラチン(分子コロイド)は、ご指摘のように、かなり透明性がよいという違いがあります。
 墨汁は炭素の小さな粒、牛乳はいろいろの有機物の入った小さい粒が水に分散したものですが、ゼラチンは、コラーゲンという非常に細い糸のような高分子(タンパク質)が主成分です。この高分子を水などの低分子溶媒に溶かすと、丸まった糸くずのようなかたちをとり、外見上は、分散・会合コロイドと同じような丸い粒のような形をしているように見えますが、丸まった糸くずの内部には多数の水分子が入り込んでおり、炭素や有機物の粒のように内部がびっしりと詰まった球とはずいぶん違います。
 内部が隙間だらけの糸まり状の高分子は、中身がびっしりと詰まった炭素や有機物の粒よりも、光を散乱する能力がずいぶん弱いので、ゼラチン溶液は透明に見えるわけです。ただし、アルコールや砂糖、塩などの低分子の水溶液と比べますと、光を散乱させる能力は強いので、ゼラチンの濃度をずっと高くしていきますと、うっすらと白く濁って見えてくるはずです。もちろん、その前に溶けなくなるかもしれませんが。
 ゾルがゲルに変化するのは、コロイド溶液中の粒と粒の間に強い引力が働き、多数の粒同士が引っ付いた状態になることに対応しています。粒が数珠のように繋がって、溶液内に網目のような構造ができますと、その溶液はもはや流れることができなくなります(ゲル状態)。どのような条件でゲルになるかは、粒(分散質)間に働く引力の強さによって決まります。粒が電気を帯びていますと、静電反発によって粒が引っ付くのを妨げますが、塩を入れると静電反発が弱まってゲル状態になろうとします(あるいは粒同士が引っ付いて沈殿してくるようになります)。
 一度ゲルになったものが、元に戻るかどうかも、粒(分散質)の性質によって異なります。ゼラチン溶液を低温で固まらせたゼリーは、温度を上げるとまたゾル状態に戻ると思います。豆腐は「にがり」(ある種の塩)を入れて加熱することによって固まらせますが、この塩を除くとまたゾル状態に戻るはずです。ただし、一度加えたにがりを取り除くのはそう簡単な作業ではありません。




(TS) 2001/11/30