Q318★アルミ缶は漂白剤で熔けるなぜですか? アルミ容器に漂白剤を入れ3日ほどして見ましたら漂白剤が無くなっていました。どうしてですか?


まずはアルミニウムの性質から。
単体のアルミニウムは,中性では比較的安定ですが,酸の水溶液にも強アルカリ水溶液にも,水素を発生して溶けます。しかし,単体のアルミニウムを空気中に放置すると,表面にち密な酸化物の膜ができます。アルミニウムは濃硝酸や濃硫酸には溶けにくいのですが,これも表面にち密な酸化物の皮膜ができるからです。
このような状態を不働態といいます。アルミニウム製品の表面を人工的に酸化させて,酸化アルミニウムの被膜を作ったものをアルマイトといい,日本で発明されたものです。

さて,アルミ缶についてですが,
アルミ缶は,酸の水溶液やアルカリ水溶液と反応しやすいアルミニウムの金属そのものではなく,その表面は酸化アルミニウムという酸化物の被膜で覆われています。その上,防食,防錆,美観面から,塗料,インク印刷が施されています。
缶の内面は,食品衛生上,エポキシ樹脂によるプラスチック皮膜でコーティングされています。こうして,飲料水がアルミニウム金属に直接触れることがないようになっています。

しかし,プルトップを開けた部分は,アルミニウム金属を引きちぎっていますから,アルミニウム金属がむき出しになります。そこから腐食が始り得ます。プルトップの部分だけではなく,もしプラスチック皮膜が傷つけられ,さらにアルミニウム表面の酸化物被膜が傷つけられると,アルミニウム金属がむき出しになり,簡単に腐食が始まるでしょう。

アルミ缶に入れた漂白剤が何であるか書かれていませんが,たとえば次亜塩素酸ナトリウムという塩素系漂白剤であるならば,強いアルカリ性の水溶液です。エポキシ樹脂は5%NaOHで煮沸すると分解すると言われていますから,次亜塩素酸ナトリウム水溶液をアルミ缶に入れると,わずかでも内面のコーティング被膜を分解するかもしれません。
さらに,酸化被膜である酸化アルミニウムは非常に硬質であり耐久性に優れますが,強酸や強アルカリに対しては溶解したり腐食する場合もあります。また,強電解質や貴金属に湿潤状態で接触すると腐食する事もあります。

アルミニウムがアルカリ水溶液に溶解してしまったのかもしれません。液体が漏れるのに大きな孔は要りませんから,わずかの腐食が起こっただけでも漂白剤が漏れて無くなってしまうかもしれません。

(TK) 2008/12/04 - 2020/01/24