Q33★なぜ青酸カリをのむと死んでしまうのですか?そのメカニズムを教えてください。解毒剤はありますか?


青酸カリはKCNという化学式で表せます。水に溶けるとK+とCN-になります。このCN-が消化器から吸収され全身にまわります。またKCNの水溶液からは青酸(HCN)という気体が発生しますが、この気体はKCNよりも約3倍毒性が強く、肺や皮膚から吸収されます。口からとった青酸カリも胃の酸性条件下で青酸を出すことになり、毒性が強まります。CN-は金属イオン(鉄や銅など)と強く結合する性質があります。これが青酸の毒性を表す基になります。

青酸の毒性は、簡単に言うと細胞の呼吸を止めることが原因です。細胞は呼吸によりエネルギーを得ていますが、その実体はミトコンドリアという器官で電子伝達系(水素伝達系)という一連の電子の流れで酸化が起こり、そのときに作られるプロトン(H+)の膜を介した動きを利用して、生体で使われるATPというエネルギー源を作ることになります。この電子伝達系の最後の酵素であるシトクロームオキシダーゼという酵素は、酵素活性を出すために鉄を含んでいます(酵素の活性中心といいます)。
先に述べたようにCN-は金属イオンと強く結合する性質があるために、酵素の中の大事な鉄と結合し、この酵素の働きを止めてしまいます。そこで細胞は呼吸ができなくなって死んでしまいます。以上がミクロ的にみた青酸の毒性です。

さてマクロ的に見てみましょう。青酸カリを飲むとCN-が全身に回ります。一部は大脳の細胞の機能を停止させます。その結果、血管運動神経が麻痺して昏睡状態に陥ります。また量が多くなると呼吸中枢が麻痺するために呼吸が停止します。青酸カリの致死量は0.2グラムといわれており、数分で死に至ります。

青酸中毒の解毒剤はあります。亜硝酸アミルの吸入が主に行われます。亜硝酸アミルは赤血球中にあるヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化します。CN-はこのメトヘモグロビンに結合するので、CN-の細胞内ミトコンドリアへの移行が抑えられます。さらにチオ硫酸ナトリウムの注射が行われます。CN-はチオ硫酸イオンと反応してチオシアン(SCN-)という毒性のより弱いものになって、尿から排泄されます。

(NO) 2003/09/05 - 2018/11/06