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Q406★化学の実験でアルコールとカルボン酸をエステル化して、バナナの香りをつくる実験をしました。酢酸ペンチルというのがバナナの香りに似ているそうですが、シンナーの臭いにしか思えませんでした。他にも酢酸エチル(リンゴの香り)、酢酸プロピル(桃の香り)も合成しましたが、やはりシンナーのような臭いがしました。シンナーの臭いではなく、果実のような甘い匂いは、どのようにすれば合成できますか。

(1)合成したエステルの純度について
高校での化学の実験でエステルを合成するときは、カルボン酸とアルコールを混合して酸触媒下で反応を行っていると思います。この場合、エステル化の反応は100%進まず、エステル、カルボン酸、アルコールの混合物になっているかもしれません。「純粋なエステル」と「混合物」では、匂いの感じ方は異なるかもしれません。

(2)シンナーの成分について
シンナーは水には溶けない塗料を薄めるために用いられる有機化合物の液体です。シンナーの成分に「酢酸エチル」が含まれることがあります。濃い酢酸エチルの蒸気を嗅いでしまうと、シンナーのような香りに感じられるかもしれません。

(3)におい成分の濃度と感じ方について
「匂い」の感じ方は、濃度によって変わることが知られています[1]。合成したエステルの濃度を十分に薄めてにおいを確認すると、どのように感じるでしょうか?例えば、少量をコットンなどに含ませて、大きな容器に密閉しておき、容器の中の空気のにおいを少しだけ確認するとどうでしょうか。

(4)におい成分の混合と感じ方について
「匂い」は、1つの化学物質のみで決まるのではなく、多くの化学成分の組み合わせが関係していることが多いと思います[2]。例えば、リンゴのにおいは、エステル類に加えて、アルコール類やアルデヒド類、芳香族化合物などが香りに関わっているそうです[3]。複数のエステルやアルコールを混合すると、どのようににおいの感じ方が変化するでしょうか?
ヒトは「匂い」を判断するための嗅覚受容体の遺伝子を約400個持っており、 約40万種類と言われるにおい成分を判別しているそうです。においの科学は複雑で、まだ分かっていないことも多いと思います。どのようにすれば「果実のような甘い匂い」になるのか、色々と実験すると興味深いと思います。

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参考文献:
[1] (a) 日本感性工学会論文誌 2014, 13, 591-601.
「香りの分類における心理学的検討」
(b) 九州大学プレスリリース 2012/03/12
「匂いの濃度によって好みが変化する仕組みを解明!」
[2] (a) 化学と教育 2017, 65, 524-525.
「嗅覚と化学:匂いという感性」
(b) 京セラ株式会社 webページ(2023年11月4日 閲覧)
「40万種類といわれるニオイや香りの判別を可能とする「MSSS嗅覚IoTセンサー」技術開発」
[3] (a) 長谷川香料株式会社 webページ(2023年11月4日 閲覧)
(b) Science Portal webページ(2023年11月4日 閲覧)
「蜜入りリンゴのおいしさの正体「香り」」
(c) 曽田香料株式会社 webページ(2023年11月4日 閲覧)
「りんごのおいしさには「嫌われ者」が寄与!?」

高3 (TH) 2023/11/15