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Q414★イオン性化合物や極性分子などは、水分子の極性に引っ張られる形で溶け込みやすいので、like dissolves likeと言われるようですが、ではなぜ無極性分子は無極性溶媒に溶けやすいのでしょうか。電気的な引力などで説明することは可能でしょうか。


「似たもの同士はよく溶ける」を理解するためには、分子にはたらく「力(相互作用)」について考える必要があります。

分子には大きく分けてファン・デル・ワールス相互作用と静電相互作用が働いています。ファン・デル・ワールス相互作用は、どんな分子にもはたらく弱い相互作用(引力)です。静電相互作用は、分子がもっている電荷の間にはたらくクーロン相互作用が主な起源です。

水の中では、電気的にプラスに偏った水素原子と、マイナスに偏った酸素原子の間で静電相互作用(水素結合)することで強いネットワークを形成しています。この強固なネットワークの中に水分子以外の分子が溶けるためには、水分子のネットワークを切断し、水分子と静電相互作用する必要があるので、極性の大きな分子が溶けやすくなります。逆に、水の中に無極性分子が入っても水分子のネットワークを切断できないので、無極性分子同士で集まってしまい溶けません。これをしばしば疎水性相互作用とも呼びますが、無極性分子の間に特別な力が働いているわけではありません。

では、無極性分子の溶媒中ではどうなっているかというと、無極性分子の間には万物はたらく弱いファン・デル・ワールス相互作用しかはたらいていません。異なる無極性分子の間にはたらく相互作用は変わらないので、無極性分子同士は自由に混合できます。無極性分子の中に水分子が入ると、水分子は水分子同士で水素結合を形成したほうが安定に存在できるので、結果として無極性分子と水分子(極性分子)は混ざり合わないことになります。

参考文献
1.材料有機化学、伊与田正彦 編著、朝倉書店
2.マテリアルサイエンス有機化学、伊与田正彦・横山 泰・西長 亨 著、東京化学同人

高2 (KM) 2024/07/03