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Q424★硫黄化合物の安定酸化数について
無機化学の分野で、酸化還元反応を考える際に、酸化数や電気陰性度が参考になると習いました。
例えば、ハロゲンは電荷マイナス1のイオンになる性質が強いため、酸化剤になりやすいことや、金属元素はそれぞれのイオンになるために還元剤になりやすいなどです。また、過マンガン酸カリウムは、真ん中のマンガンが、酸素から電子を取られてしまっているため、安定な酸化数2や4になろうとして酸化剤として使われることが多いということも納得しました。
ただ、16属の硫黄について、酸化剤、還元剤のどちらになるのかが納得できませんでした。酸素と同じ16族なので、(電気陰性度は酸素ほど大きくないものの)S2-になる性質が強くなると思ったのですが、実際にはH2Sは還元剤と書いてありました。また、硫黄原子がS2-になろうとするため、酸化剤になると予想したのですが、実際には酸化数+6に向かって還元剤の役割をすることが多いようでした。
硫黄原子の反応性が、酸素と違い過ぎて、16族というイメージとは少し違うようなのですが、どう理解したら良いでしょうか?もちろん、酸化還元反応は相手との相対的な力関係で決まるということはわかっているので、酸素と結びつけば、酸化数がプラスになることはわかっていますが、本来-2になりたいはずのSが酸素によって無理やり電子を奪われたとすると、それを取り返そうとするため、酸化数4や6の状態は不安定になり、そこから脱出するために酸化剤になりやすいのではないかと思うのです。

 仰る通り、酸化還元反応には、酸化数や電気陰性度が関係しており、特に電気陰性度が大事です。OとSは同じ16族ではありますが、電気陰性度がOは3.44、Sは2.58と、かなり違います。Cの電気陰性度が2.55であることを考えると、SはOのようにひたすら周りから電子を奪うのではなく、状況によって電子を渡すケースもあります。なので、イメージしておられる「Sは酸素と同じ16族なので、(電気陰性度は酸素ほど大きくないものの)S2-になる性質が強くなる」や、「本来-2になりたいはずのS」という部分に実際との相違があることになります。

なぜSがOと違う挙動が観測されるかについては、少し詳しい説明が必要となります。OとSは同じ16族なので、一番外側のs軌道とp軌道(高校の教科書の発展の部分に記載があります)の電子の入り方に関しては同じです。しかし、Sの方がより電子を多く持っており、より外側の軌道にも電子が入ります。具体的には、Oの最外殻電子は2sに2個、2pに4個の電子が入っているのに対し、Sは3sに2個、3pに4個の電子が入っています。外側の軌道ほど原子核から遠くに分布しているため、その軌道に入っている電子と原子核との間のクーロン力が小さくなります。その結果、同じ属の元素でも、周期表の下に行くほど電子が取れやすくなる、つまり電気陰性度が下がり、他の元素に電子を受け渡す性質が現れることになります。
このようなSの特性が、Oとは異なる酸化還元特性に現れています。


高2 (YK) 2025/1/10