Q56★りんごの変色を防ぐ物質の研究をしているのですが、なぜ、食塩はりんごの変色を防げるのですか?


  りんごの実にはタンニンやケルセチンとよばれる色素が含まれています。これらの色素は最近話題になっているポリフェノールのなかまです。また,タンニンはしぶみの原因でもあります。
実の中にはこの他に,ポリフェノールオキシダーゼとよばれる酸化酵素も含まれています。酸化酵素はタンニンやケルセチンなどと酸素とを結びつける働きをします。
りんごの皮をむいたり,半分にわったりすると,切り口が空気と触れ,タンニンやケルセチンなどが酸化酵素の働きで酸素と素早く反応し,たちまち褐色になります。これが変色の原因です。
 したがって,変色を防ぐにはりんごの実の切り口を空気に触れさせない。あるいは,酸化酵素の働きをおさえる物質を加えることが必要になります。うすい食塩水(1%弱)にりんごをひたすのは変色を防ぐ代表的な方法ですが,食塩水中の塩化物イオンが酸化酵素に結合して,酵素の働きを抑えるためリンゴが変色しないと考えられています。
 その他にはレモン汁をかける(ビタミンCが含まれている),あるいはビタミンCの水溶液をかけるなどの方法があります。ビタミンC(物質としてはアスコルビン酸といいます)の方がタンニンなどより先に酸素と反応するので結果的に空気と触れさせないことと同じになります。市販のりんごジュースをコップに注いでも変色しにくいのは,ビタミンCを少量入れてあるからです。

参考文献
「酵素的褐変とその制御」
御茶ノ水女子大学 村田容常先生
「化学と生物」45巻第6号2007年403-410



(RN & KN & HH) 2004/07/27 2015/12/07