Q9なぜ、沸点上昇や凝固点降下が生じるのですか?


 沸点上昇とは、ある不揮発性の溶質分子を溶媒分子に溶かすことにより、その溶液の沸点が、純粋な溶媒の沸点よりも高くなる現象のことです。沸点上昇は、蒸気圧降下という現象と密接に関わっていますので、まず蒸気圧降下について説明します。純粋な溶媒の蒸気圧は、温度によって決まっています(水の場合は100℃で1atmです)。別の言い方をすると、溶媒の表面からは、一定数(温度により変化します)の溶媒分子が蒸発して飛び出しています。ある不揮発性の溶質分子が溶媒分子にとけている溶液の場合も、溶媒分子は溶液表面から飛び出します。しかし、そのような溶液では、溶液全体の粒子の数に対する溶媒分子の割合が減るため、溶液表面から蒸発して飛び出す溶媒分子は、純粋な溶媒の場合よりも少なくなります。したがって、同じ温度でくらべると、溶液の蒸気圧は、純粋溶媒の蒸気圧よりも小さくなり、これを蒸気圧降下といいます。このように、溶液では蒸気圧降下が起こるので、たとえば、水蒸気の蒸気圧を1.013×105Pa(外気圧)にするためには、純粋な水の沸点100℃よりも高い温度が必要になります。これを、沸点上昇といいます。
 次は、凝固点降下について説明します。純粋な溶媒の凝固点では、液体から固体になる溶媒分子の数と固体から液体になる溶媒分子の数が等しくなっています。その状態で不揮発性の溶質を加えると、溶液中では溶質粒子が存在するため溶媒粒子の比率が減り、液体から固体になる溶媒分子の数が減ってしまいます。そのために、その温度では溶液は凝固できず、凝固させるにはもっと温度を下げなければならなくなります。これを凝固点降下といいます。



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