Q189★ぶとう100%、りんご100%、オレンジ100%、ぶとう10%の4つの氷を凍らせて、どれが一番早く溶けるか実験しました。結果は、1.ぶどう10%、2.ぶどう100%、3.りんご100%、4.オレンジ100%でした。予想では、果汁の多い(糖分の多い)ぶどう100%の方が先に溶けると思ったのですが、なぜぶどう10%のほうが先に溶けたのでしょうか?
理由がわかりません。また、ぶどう、りんご、オレンジの順番に溶けたのにはどういう理由があるのでしょうか? 炭水化物の量やエネルギーの量は関係ありますか? それはね… 何も溶けていない水の場合、通常の大気圧では、おおよそ0℃で氷になります(ご存じですね)。(注意:実際には過冷却という現象があり、0℃以下にしないと凍らないことがあります) それに対して、ジュースなどいろいろな物が溶けた“水溶液”が凍るときには、0℃よりももっと温度を下げて冷やさないと凍りません。この現象を凝固点降下(ぎょうこてんこうか)と呼びます。 この凝固点降下(固体になる温度が下がること)の度合いは、その“水溶液”の中に溶けている物の物質量(参考1:とけている粒子の数にあたります)によって変わってきます。通常、どの物質か? という物質の種類には関係なく、物質量で凝固点降下のおおきさが決まっています。 溶けている物質の物質量が大きい水溶液は凝固点降下が大きいため、凍る温度が低く、反対に溶けている物質の物質量が小さい水溶液は凝固点降下が小さく、凍る温度が0℃に近いと言うことになります。 さて、今、あなたが実験されたのは、あらかじめ凍らせておいたジュースを溶かしたときの話ですので、凝固点降下が大きい方が早く溶け、凝固点降下が小さい方があとから溶けると言うことになります。 ここまでのことはだいたいご存じだと思います。 どれが最も早く溶けるかを考えるときに重要なのは、果汁の%数ではなく、どれだけの物質量がその水溶液に溶けているかと言うことです。 具体的には、ジュースのパッケージにある成分表を見てみて下さい。 おそらくここで最も重要なのが、お察しの通り炭水化物(参考2)の量だと思います。炭水化物以外にもナトリウムやカリウムなどの量が書かれていると思いますが、単位を見ると炭水化物がgなのに、それ以外の物はmgとなっていて、約1000倍ほど違うことが分かると思います。 つまり炭水化物が多い物ほど(エネルギーの大きな物ほど)、溶けている糖質の物質量が多く、凝固点降下が大きいことになります。 使われてジュースを確認してみて下さい。私があるメーカーの果汁100%ジュースを調べて見たところ、あなたの実験結果と同じようにグレープが最も炭水化物の量が多く、オレンジの中の炭水化物の量が最も少なかったです。 10%ブドウジュースは、100%のブドウジュースを単純に何も溶けていない水で10倍にうすめた物ではなく(そんなことをすると、とてもまずくなると思います)、薄めるときに、たくさんの砂糖や果糖を加えていると思います。 どのメーカーのジュースを実験に使われたのかにもよるかも知れませんが、10%ブドウジュースが最も炭水化物量が多かったのだと思います。 果汁の量ではなく、中に溶けている物質のトータルの物質量が凝固点降下に影響しています。 (参考1)物質量とは、簡単にはその物質の個数だと思って下さい。違う種類の物質があって(大きなかたまりと小さなかたまりがあったと考えて下さい)、それが同じ重さあった場合、たとえ同じ重さであっても大きな物質の数は少なく、小さな物質の数は多くなります。このとき、大きな物質の物質量は小さい、また小さな物質の物質量は大きいということになります。物質量については高校で勉強します。 (参考2)ここで書かれている炭水化物とは、糖質と食物繊維の量を合わせたものですが、普通のジュースでは糖分の方が多いですので、炭水化物=糖質と思って頂いて良いと思います。また、エネルギーとは、ジュースの場合ほとんどがこの糖分からくる物で、糖分の量に比例していると思って下さい。 (HH) 2011/08/17 |