Q212★以前食物から栄養素を取り出す実験で、コーンフレークを使って鉄分を取り出す簡単な実験を行いました。 鉄分はひじきに多く含まれているということで、ひじきから鉄分を取り出したいと考えています。 調べた結果、ひじきを細かくし、炭化させたうえで水とまぜ、塩酸を加えて加熱、濾したうえで何らかの処置を行うと鉄分を取り出せるようですが、詳しいことがよくわかりません。 1)ひじきはミキサーで粉砕する程度でよいのでしょうか。 2)炭化というのはオーブンで天板に広げて焼くような方法でよいのでしょうか。それともフライパンや鍋などにいれてアルミホイルでフタをして加熱するような方法なのでしょうか。時間はどのくらいが目安なのでしょうか。 3)塩酸というのは濃度が高くなければならないのでしょうか。サンポールなどで代用できるのでしょうか。なぜ塩酸でなければならないのでしょうか。 4)何らかの処置、という部分が不明で困っています。濾すということは液状になっているわけですから、それをそのまま加熱するなりして、磁石を近づけるなどして取り出せばよいのでしょうか。 それはね… ご質問の「ひじきから鉄分を取り出す」ことについてです。 ひじき中に含まれている鉄分は、コーンフレークの場合とは異なり、いわゆる「鉄イオン」の状態で含まれています。 そのため、コーンフレークの場合とは異なり、磁石に引き寄せられる状態ではなく、磁石につくような「鉄粉」としては、簡単には取り出すことはできません。 (コーンフレークの鉄分は、文字通り鉄の粉を後から添加してありますので、磁石で集めることができます。) 鉄イオンとして取り出して調べる方法はありますので、その実験法については下記に記載します。 ただし、酸の中和を必要とするため、保護メガネと保護手袋を用意して、十分に注意して行う必要があります。 また、この方法は水質検査用パックテストキットを使用していますので、これを購入する必要があります。 ひじきに含まれる鉄分の量は、重さでいうとひじき100 g中に鉄が6 - 60 mgと、とても少ない量です。人間が摂取する量としては十分なのですが、目に見えて取り出すとなると難しいです。 コーンフレークについても、100 gあたりの鉄分は約9 mgと、そんなに多いわけではないのですが、コーンフレークはすでに十分に乾燥がなされた状態であり、かつ鉄粉の状態なので、磁石を用いて観察することで鉄分を確認することができます。 それに対して、ひじきは乾燥ひじきでも、かなりの水分とその他の成分を含んでいますので、鉄イオンを取り出すためには処理が必要となります。 一応、自由研究でひじきから鉄分を取り出せたという例はあるようです。 ただし、1 kgのひじきから200 mgしかとれてこないということと、ひじきを灰になるまで焼く必要があるので、一般家庭で行うとなると困難です。 添付しております実験方法では、ひじきを灰ではなく炭にするだけですので、そこまで難しくはありません。ただし、換気には気を付けてください。 ご質問で書かれていた塩酸は、イオンとして鉄を溶かしだすためのものです。 サンポールは、塩酸で言うと10%塩酸に相当するようです。 イオンとして取り出すことができれば、水質測定を行うための市販のパックテスト用キットで調べることができます。 実験方法 < ひじきから鉄イオンを取り出してみよう> ■用意するもの ・乾燥ひじき ・アルミ箔 ・ガスコンロ ・加熱用の網 ・サンポール(理想は10%塩酸) ・重曹(炭酸水素ナトリウム、中和用) ・かきまぜ棒(プラスチック棒で可) ・ガラス容器 ・計量カップ(100 mL程度) ・ろ過できるもの(コーヒーフィルター等) ・中和用バケツ ・鉄用パックテスト *今回は株式会社共立理化学研究所のものを使用 ・保護手袋 ・保護メガネ ■実験のやり方 1)乾燥ひじきを5 gはかり、アルミ箔にのせてくるみます。半分におって二重にしたアルミ箔の中央にひじきをのせて、しっかりと包み込みます。 2)ガスコンロでアルミ箔ごと加熱します。このとき、煙がたくさん出るので、換気には気を付けてください。煙が出なくなるまで加熱します。 3)煙が出なくなったら加熱をやめてよく冷まして、アルミ箔を開けます。炭になってもろくなったひじきが入っていますので、アルミ箔で挟んでつぶします。 4)つぶして細かくしたひじきの炭をガラス容器に入れて、サンポールを50 mL加えてかきまぜます。かきまぜるのは、プラスチックの棒でよいので、コンビニエンスストア等でもらえるプラスチックのスプーンなどを使いましょう。 (金属製の容器は酸で錆びたり色が変わってしまったり、危険な金属が溶け出したりすることもあるので、絶対に使用しないでください) 5)コーヒーフィルターなどで、炭をろ過して取り除きます。ろ液は、10 mLとれば十分です。 6)ろ液10 mLに対して、水を90 mL加えて薄めます。 7)薄めたろ液を中和用バケツ(発泡が起こるので大きめの容器を使います)に移します。保護メガネと保護手袋をして、重曹を少しずつ加えます。(激しい発泡が起きるので、必ず少しずつ加えてください!)3 g程度で発泡がおさまると思いますが、発泡がほとんど起こらなくなるまで加えてください。 8)市販の鉄用パックテストのチューブに、上澄みをとって2分ほど放置してください。発色が確認できます。 ★後処理 使用したサンポールは、中和用バケツで中和してから水道に流しましょう。その時、保護メガネと保護手袋を着用してから中和しましょう。 <参考> 乾燥ひじきをアルミ箔中で炭にしなくても、サンポールである程度の鉄イオンを取り出すことができます。ただし、炭にしていない場合はひじきの色が出てしまうため、検出を少しだけ邪魔します。炭にしておけば、無色透明なろ液を得ることができます。 コーンフレークについても同じようなことができますが、コーンフレーク中には鉄粉がそのまま入っていますので、鉄粉が塩酸に溶ける様子を見ることができると思います。 鉄製の急須で沸騰させたお湯や、そのほか鉄分が入っていそうな飲み物や食べ物でも試してみると面白いと思います。飲み物であれば、酸で処理する必要もないので、簡単かもしれません。 (MT & YM) 2018/03/27 |