Q362★冷却曲線がよくわかりません...
凝固点降下にせよ、補正をかけているのは理解できたのですが、なぜ延長線を引くことで本来の数値が求められるのかがわかりません。
凝固の核が必ずしも0度でできるはないから過冷却が起こる。0度以下に冷やしたらようやく凝固が始まる。するとエネルギーが放出され温度が上昇する。
ここまでは理解できます。

Q1)純溶媒(ただの水)の場合、凝固熱で曲線が温度上昇するのは理解できますが、都合よく凝固点の温度まで上がって止まるのがよくわかりません。


Q2)不純物入り水溶液の場合、CDゾーンが斜めに下降していくのが理解できません。
溶媒が凝固したから、溶質の存在感が高まり、より一層残る溶媒の凝固が難しくなると思うのですが、なぜ綺麗に右下がりの「直線」になるのでしょうか。

そして、この直線を延長するとなぜ最初のU字型の凝固点降下のゾーンの補正ができるのかも理解できません。


Q3)冷却のゾーンは、本来の凝固点より下がり続けているゾーン(Xとします)と、結晶核ができ凝固し始め温度が上昇しているゾーン(Yとします)の2つに分かれると思います。

Xでは、一部の水分子が凝固していると思うので凝固熱が発生していると思いますし、凝固したものが融解して吸熱反応による冷却効果が起き、そして外部から加えている冷却という3つのパワーバランスがあってXという傾きになっているのだと考えています。

Yでは、大きな結晶核の固まりができて急速に凝固した結果、融解による冷却と外部からの冷却を超える熱が発生し、グラフが跳ね上がっているのだと考えています。

そして平衡に至るわけですが、どうしてもいろんな熱が関わっているのに直線を延長して本来の凝固点を定められるということがうまく理解できません。

点Dが融解と凝固が釣り合った場所とも言えるので、凝固点と言えるのではないかとも思ったりしています。


まず、質問点について一つずつ回答します。

Q1)純溶媒(ただの水)の場合、凝固熱で曲線が温度上昇するのは理解できますが、都合よく凝固点の温度まで上がって止まるのがよくわかりません。

過冷却後に温度上昇する際に「都合よく」その時点での凝固点の温度まで上がるのではありません。液体から固体への相変化に伴って発熱することは理解していると思いますが、その発熱によって温度が上昇していきます。では、凝固点よりも高くなるように発熱が生じたらどのようになるでしょうか。凝固点よりも高くなると、もちろん固体は液体に相変化します。その際、吸熱反応となるので周りから熱を奪うことになります。その結果、温度は下降することになり、ふたたび凝固点となります。実際には、「液体から固体」と「固体から液体」の発熱と吸熱がバランスよく起こり、凝固点の温度まで上昇することになります。


Q2)不純物入り水溶液の場合、CDゾーンが斜めに下降していくのが理解できません。溶媒が凝固したから、溶質の存在感が高まり、より一層残る溶媒の凝固が難しくなると思うのですが、なぜ綺麗に右下がりの「直線」になるのかがわかりません。

そして、この直線を延長するとなぜ最初のU字型の凝固点降下のゾーンの補正ができるのかも理解できません。


求めたいデータの値を得るために、実際に得られたデータから「グラフの外挿」を用いることがあります。反応を開始した瞬間の値や濃度を限りなく薄くしたときの値など、実際にデータを取ることができないときです。今回の場合では、過冷却が起こらなかったときの凝固点(グラフが折れ曲がる点)の値です。では、過冷却が起こらなかった場合を想定すると、図に示しているように過冷却の度合いが段々と小さくなっていく(あまり過冷却とならなかった場合)と、過冷却由来のグラフの凹みがなくなり、点A’での折れ曲がりに収束するのが予想できます。そのため今回求めたい値である、過冷却が起こらなかった場合の凝固点は点A(=点A’)であると言えます。では、どのようにして実際のグラフから点Aを求めればよいのでしょうか。それには、点C付近で直線に近いところからその線を延長して、つまり外挿して点Aを求めることとなります。そこで、疑問点にあります通り「直線」で本当に外挿していいのかという点ですが、それについては何回もの実験を行ったり、条件を変えた実験を行ったりすることで、その妥当性を議論する必要があります。今回の凝固点降下については、先人の実験結果や議論に基づいて「直線」で外挿することで凝固点を得ることができるということになります。


 
データの求め方に疑問を持つことは科学者として大変正しい姿勢だと思いますので、常に疑問を持って下さい。

最後に、(5)の箇所で、「Yでは、大きな結晶核の固まりができて急速に凝固した結果、融解による冷却と外部からの冷却を超える熱が発生し、グラフが跳ね上がっているのだと考えています。」とありますが、正しくは以下の通りです。
急速に凝固した結果、凝固による発熱(液体から固体への変化のため発熱となります)量が外部からの冷却による吸熱量よりも上回るため、溶液温度が上昇します。しかし、大きな発熱は凝固した固体を溶かし液体となり吸熱する結果、バランスが取れたCという状態になります。

中高生の質問のページQ360の回答も参考にしてください。

(JM & NN) 2018/05/22