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Q403★ボルタ電池にはなぜ希硫酸を使うのですか。また、希硫酸の代わりに希硝酸などを用いたらどうなりますか。

電池の電極が浸っている溶液を電解液や電解質水溶液と呼びます。電解液は、(1)目的とする反応だけが起きるか、(2)電極や電解液自身が安定であるか、(3)大きな電圧や電流が得られるか、などの条件に基づいて選定されます。ボルタ電池に希硫酸を使うのは、他の電解液と比較してこれらの条件を満たしている項目が多いからです。  例えば、塩化ナトリウムなどの中性の水溶液を使った場合、水溶液中の水素イオン(H+)の濃度が酸性溶液と比べて低いため、式(a)の正極での反応が進行しにくくなってしまい、得られる電圧(起電力)が低下してしまいます。
 2H+ + 2e- → H2 … 式(a)
ですので、希硫酸などの酸性水溶液が用いられます。硫酸以外にも、塩酸(HCl)や過塩素酸(HClO4)水溶液などが適していると考えられます。

質問にあった希硝酸に関しては、上記の(1)や(2)の条件に一部当てはまらないです。硝酸は金属銅電極上で式(b)や式(c)の反応で還元されて、アンモニウムイオンや一酸化窒素を生成してしまいます。
 NO3- + 10H+ + 8e- → NH4+ + 3H2O … 式(b)
 NO3- + 4H+ + 3e- → NO + 2H2O … 式(c)
つまり、電池反応の進行とともに電解液自身が分解してしまうのです。さらに、金属銅電極は希硝酸に浸しただけで少しずつ溶解することも知られています。これらの理由から、希硝酸はボルタ電池の電解液としてはあまり適していないといえるでしょう。

なお、今回のことと関連する質問と回答が中・高生の質問コーナーのQ402のページにも掲載されていますので、是非見て下さい。

中3 (KK) 2023/01/16